決勝第2戦サントス対グアラニ サントス、今年初のタイトルはペレの時代以来のサンパウロ州選手権3連覇だった!

5月13日日曜日のことである。早くもすでに1週間以上が経ってしまった。

この日は、一年でブラジルのサッカーが一番盛り上がる日だったかもしれない。というのも、各州で行われていた州選手権の最終日が、主要な州ではすべてこの日に行われたからだ。

世界中広しといえども、国に加えて、州レベルでサッカー連盟があるのはブラジルぐらいだろう。ブラジルは、面積で日本の約23倍で、26の州と1つの連邦直轄地に分かれている。その27の州および連邦直轄地のサッカー連盟が主催する正式な大会が各州で毎年1月から5月上旬に行われるのだ。

ブラジルのサッカーは、リーグ戦が、1月中旬から5月上旬に行われる州選手権と5月中旬から12月上旬に行われるブラジル全国選手権で行われ、それと並行する形で、リベルタドーレス杯やコッパドブラジルといったカップ戦が行われるのである。

州選手権は、日本に当てはめてみたら、都道府県大会、もしくは地方大会ということになるだろう。小、中、高等学校などの学生の大会ならわかるが、プロではあまりピンとこないだろう。

しかし、ブラジルでは、ブラジル全国選手権よりも歴史が古く伝統があり、かなり重要な大会であると認識されている。

何より、全国大会で優勝を狙えるクラブは限られるが、州選手権ならそれほどハードルが高くなく、地元のチームでも必ずタイトルが獲れるので、各地でかなりの盛り上がりを見せているのだ。

その最後の優勝が決まる試合がこの日に一斉に行われるので、ブラジル各地で相当な盛り上がりを見せるのである。

私の住むバイーア州では、ほとんど例外なく、バイーア州選手権の2大人気チーム同士の対戦となったバイーア対ヴィトリアの決勝が見られていた。

この日、私は、出先から午後3時半ごろに自宅に戻ってきた。

周りは、BA-Vi(バイーアとヴィトリアの対戦のことでバヴィという)一色だが、私は、サントスの出るサンパウロ州選手権を自宅でTV観戦した。

この決勝は、ホームアンドアウェイで行われ、サントスはアウェイ(扱い)の第1戦を3-0で勝っていた。戦力的に見ても、サントスの優勝はかなり固いと思われた。

サントスの先発メンバーは、以下のとおりである。

GK:ハファエロ Rafael(1)

CB:右エドゥー・ドゥラセーナ Edu Dracena(2)

  左ドゥリヴァウ Durival(6)

SB:右エンヒーキ Henrique(4)

  左フアン Juan(3)

ボランチ:アロウカ Arouca(5)

     イブソン Ibson(7)

MF:右エラーノ Elano(8)

  左ガンソ Ganso(10)

FW:右アラン・カルデッキ Alan Kardec(9)

  左ネイマール Neymar(11)

先週の第1戦とほぼ同じ、ベストメンバーである。

いくら、かなり有利とは言われていても、決勝である。やはり、緊張感は漂う。

しかし、この試合、開始早々から試合が動いた。開始1分に、サントスにゴールが決まったのだ。ネイマールから右サイドのエラーノに渡り、最後は倒れながらもゴール前にパスを出し、アラン・カルデッキがこれも倒れながらゴールを決めたのだ。

いきなりのゴールである。それもサントスにだ。これは、前試合(木曜のリベルタドーレスでの8-0の大勝)のようにゴレアードも期待できそうだ、と思わざるを得なかった。

2年前の2010年の決勝では、同じく開始1分に相手にゴールを決められ、相当に厳しい戦いをさせられたのとは対照的だった。

しかし、そんな思いも長くは続かなかった。

その直後の前半5分には、相手のグアラニにゴールを決められてしまった。これは、GKハファエロの完全なミスだ。シュートを止め切れず、弾いたところを詰めていた選手に決められたのだ。

一体、どういう展開になるのかわかりかねていたその直後の前半9分に、今度はグアラニの選手がペナルティーエリア内でハンドを犯したのだ。PKである。これを、ネイマールが当然のようにきっちり決め、再びサントスが2-1でリードした。

しかし、それからほどない前半15分に、またグアラニに決められてしまったのだ。

またミスからだ。今度は、DFドゥリヴァウがゴール前でクリアミスを犯し、それを押し込まれてしまったのだ。これで再び、2-2の同点になった。

サントスの選手に、こんなイージーミスが続くのは珍しい。決勝の舞台で相当に緊張しているのか?それとも、雨天のためグランドコンディション不良のせいか?しかし、ドゥリヴァウに限っては、そんなことはないはずだ。何といっても、この選手は、今年まで10年連続で州選手権の決勝に出ているのだ。当然、いろいろなクラブを渡り歩いていて、様々な州での州選手権なのだが、これは本当にすごいことだと思う。

それにしても、この日のサントスの選手たちはおかしかった。それ以外にも、かなりのミスを多発していたので、その後は見ていて気が気ではなかった。

そのまま、2-2で前半が終了した。

この時点で、2戦合計で、5-2でサントスがリードしていた。普通に考えれば、優勝間違えないだろうが、この日のサントスの選手の出来からして、かなり不安に思ったりしていた。もし、相手に1点でも取られたら状況はかなり変わってしまうからだ。

さて、私はサンパウロ州選手権を見ていたが、長男は違う部屋でバイーア州選手権の決勝を見ていた。

バイーア州選手権の試合も、相当に動きが激しく、前半を終え、2-1でバイーアといった好勝負だった。

バイーア州選手権でのゴールは、周りの反応でわかる。ゴールが入った瞬間にそれこそ割れんばかりの歓声が沸くからだ。

それも、その歓声の大きさでバイーアに入ったのかヴィトリアに入ったのかがわかるのだ。圧倒的にファン数の多いバイーアにゴールが決まったときには、それこそ大騒音が起こるのだ。

まさに、W杯の決勝でもやっているかのような、騒がしさだった。

さて、我がサンパウロ州選手権だが、後半もなかなか状況は変わらなかった。本当に、ひやひやしながら見ていたのだが、後半26分、ネイマールが中央でDFを2、3人置き去りにして、左サイドのフアンにパスを出し、フアンはDFの股を抜き、折り返した球をネイマールが楽にゴールを決めたのだ。

ゴールを決めたネイマールもすごいが、フアンのドリブル突破が光ったプレーだった。

この1点でかなり楽に見ることができるようになった。

そして、ロスタイムの後半46分、アラン・カルデッキが一人でドリブル突破し、ダメ押しのゴールを決めたのだった。

結局4-2でサントスが勝ち、今季初のタイトルを獲得したのだ。

嬉しい、というよりも、ほっとした、というほうがしっくりくるだろうか。今年2012年は、サントスにとって創立100周年のメモリアルイヤーなので、何としてもタイトルを獲得してほしかったのだ。それが、最初の大会で見事獲得してくれたのだ。

伝統あるサンパウロ州選手権で、サントスは2010、2011年に続き3連覇を達成したのだ。

2010年、そして2011年の決勝に比べて、結果的にかなり楽な内容だったので、いとも簡単に優勝したように思われるかもしれないが、3連覇は途轍もなくすごいことなのだ。ここ数年で3連覇は聞いたことがない。サントスに限っていっても、ペレの時代の1960、61、62年、そして1967、68、69年に次いで3回目なのだ。

私がブラジルに来て以来、この大会、サンパウロ州選手権は、2006年から見ていることになるので、今年が7回目ということになる。その7年間で、サントスは、2006年、2007年、2010年、2011年、そして今年2012年の実に5回優勝しているのだ。

それぞれ、とても印象深い。

2006年は、決勝トーナメントがなくリーグ戦のみで優勝が決まり、TV観戦した最終節のポルトゲーザ戦を2-0で勝ち優勝した。この優勝は、サントスにとって1984年以来実に22年ぶりの優勝だった。

そして2007年の決勝は、モルンビー・スタジアムでサンカエターノとの対戦を生観戦し、タイトル獲得の瞬間を生で味わうことができた。決勝第1戦を0-2で落としたが、第2戦で2-0で勝利し、見事2連覇を飾ったのだ。この2年間は、日系ブラジル人のホドリゴ・タバタ(ロドリゴ・タバタ)も主力選手として活躍していた。

2010年は、ネイマール、ガンソが台頭してきた年で、ホビーニョ(ロビーニョ)、アンドレも加え、超攻撃的なサッカーが魅力の年だった。決勝の相手は格下だと思われるサントアンドレで自宅でTV観戦していたが、薄氷を踏むような勝利だった。

そして、去年2011年の決勝の相手はコリンチャンスだったが、この決勝だけは私はリアルタイムで見ていない。長男のサッカートーナメントがあったせいで、サッカートーナメントの会場のTVでは、バイーア州選手権の決勝が流されていたせいで、まったく見ることができなかったのだ。結果としてアロウカ、ネイマールの2ゴールで2-1で勝利し、2連覇を飾ったのだった。

改めて、最近のサントスに相当縁のある大会であることがわかる。

表彰式も引き続き行われ、選手たちは相当に喜んでいた。ネイマールのはしゃぎ様はすごかった。足を故障している右SBのフチーリも松葉杖で登場した。他の選手たちと一緒に舞台で飛び跳ねて喜んでいたので、心配になったりもしたが・・・。

さて、他の会場はどうだったのだろうか?

我が州のバイーア州選手権は、すごいことになっていた。

結局3-3の同点で終わったのだ。バイーアが、リーグ戦での結果が上だったので実に11年ぶりの優勝を果たした。

地元の大人気チームのバイーアが優勝したものなので、自宅の周りでは、それこそW杯で優勝したかのような大騒ぎぶりだった。

これだけの歓声、騒ぎ様は、本当にW杯のとき以来ではないだろうか・・・。

他の主な州選手権の優勝チームは、以下のとおりである。

リオデジャネイロ州 フルミネンセ

リオグランジドスウ州 インテルナシオナウ

ミナスジェライス州 アトレチコミネイロ

パラナ州 コリチーバ

ゴイアス州 ゴイアス

サンタカタリーナ州 アヴァイー

バイーア州 バイーア

ペルナンブッコ州 サンタクルス

セアラー州 セアラー

これで、ブラジルでの最初の大会が終了したことになる。

次週から、ブラジル全国選手権が始まる。また、リベルタドーレス、コッパドブラジルは、引き続き真っ最中である。

サントスにとっては、リベルタドーレスが終わるまでは、ブラジル選手権は控えで戦うことになるのだろう。

次の目標は、何といってもリベルタドーレスだ。何としても、去年と同様、リベルタドーレスのタイトルも獲れるよう、素晴らしい戦いを期待するのである。