【ロシアW杯】ブラジルの対戦相手になりかけた日本。感動をありがとう!西野ジャパンの素晴らしい戦いを終えて・・・
ここまで凄い試合になるとは夢にも思わなかった。
ブラジルがベスト8進出を決めた約2時間後に、その試合は始まった。
この日、私は、急いで仕事から帰り、いくつかの所用を済ませ、一目散に睡眠をとることにした。
眠りは浅かったのだろう。いくつかの夢を見つつ、目覚まし時計に頼ることなく、夜9時50分ごろに目が覚めた。
ブラジルの試合のキックオフが夜11時だったので、その30分前ぐらいに起きれば十分だと思っていたが、予想外に早く起きることになった。
ブラジル戦のTV中継はNHKでやるので、NHKをつけた。試合の直前の10時から日本代表についての特別番組をやっていた。
その番組を見ながらぼんやり過ごしていたが、ブラジル戦が始まる前に夕食を済ませておこうと思い、前日に作ったカレーに火を通した。
そんなことをして過ごしていたら、いつの間にか、ブラジル対メキシコ戦のキックオフの時間になった。
サッカーのTV観戦では、ビールを飲みながら、というのが定番のスタイルだが、このときは、寝起き間もなかったこともあり、カレーライスを食べた直後ということもあり、食後のコーヒーを飲みながらになった。
一発勝負の決勝トーナメントは何が起こるかわからない。結果が実力どおりになるとも限らない。観るほうも真剣になればなるほど、相当な緊張感を持つことになる。
ブラジルは、それほど苦しまずに無事に勝つことができた。
ブラジルの勝利の後、日本戦のキックオフまで2時間あった。
今大会は、ジャイアントキリングや番狂わせも多く、サッカー好きの人もそうでない人も十分に楽しめる大会になっている。
見ごたえある試合が多いので、一つでも多くの試合を観たいと思う。
深夜の時間帯に行われる日本では、どのように観戦時間を作り出すか頭を使うところである。
会社の同僚には、毎日早朝に起き、2つのゲームが同時にキックオフされるグループリーグの最終節では2つのTVを並行してサッカー観戦を楽しんでいた。
いろいろな楽しみ方があると思う。
私はTVを一つしか持っていないので、そこまではできないが、数日間は夜中に行われる2つの試合のインターバルに2時間ほどの睡眠をとったりしながら、W杯観戦を楽しんでいた。
しかし、この日は目が冴えて、まったく眠気を感じなかったので、起きていることにした。
記憶が定かのうちにということで、終わったばかりのブラジルの試合について文章を書いたりしていた。しかしながら、書き終わる前に日本戦のTV中継が始まったので、パソコンを打つ手を止め、TVに集中することにした。
ブラジル代表もそうだが、日本代表の試合も楽しませてもらっている。
もしかしたら、というか、半分以上の確率で、そんな楽しみもこの試合で最後になるかもしれないと思うと、少しでも楽しみたいと思う気持ちが強かった。
ブラジルモードから日本モードへの切り替えだ。
BGMもブラジル音楽(夜中ということで静かなルイス・ボンファをかけていた)だったが、TVをつけることによってそれも止め、先日購入したばかりの日本代表の乾のユニフォームを身に着けた。
先ほどは、飲む気にもならなかったビールとつまみも用意したら、否が応にも気分は盛り上がる。ビールは、もちろん日本代表をサポートし続けるキリンだ。
そんなことをしていたら、いつの間にかキックオフの3時は目の前に迫っていた。
なぜか、先ほどのブラジル戦とは違い、TVの前でずっと立ち続けながら観ていた。ビールグラスを片手に、また時折りつまみをほお張りながら。
日本人であるわれわれにとっては、これ以上ないぐらい大事な試合だが、世界中でみれば、決勝トーナメントでもっともつまらない試合と思われているだろう。ヨーロッパの一流クラブのエースを多数揃えた世界ランキング3位の超強豪チームと、グループリーグをやっとのことで突破してきた世界ランキング61位のアジアの弱小チーム。
贔屓目なしでも、誰もがそう思うだろう。
とにかく0-0で前半を折り返してほしい。
その願いが通じたのか、ベルギーの猛攻を受けながらも、その通りになった。
ベルギーに押し込まれていたとはいえ、日本にもカウンターからの得意な形からいくつか決定的なチャンスを作れており、希望を持てる内容だった。
後半はまさにドラマチックだった。
いきなり開始3分、試合は動いた。
なんと、日本にゴールが決まったのだ。
自陣内で乾から受けたボールを柴崎が絶妙なタイミングで前線へスルーパスを出した。これが針の穴を通すようにきれいに相手DFの脇を通り抜け、右サイドを走り込んだ原口が落ち着いて蹴ったシュートは、ゴール左サイドネットにきれいに入ってくれた。
「よっしゃ!」
夜中だったが、TVの前で大声を上げてしまった。
原口がやってくれた。よくこの状況で落ち着いて決めてくれた。
毎試合、人一倍ピッチを駆け巡り、献身的に攻守に貢献していた原口が決めてくれたのだ。
そして柴崎。この人は本当に凄い。これ以上ないタイミング、コース、スピードで敵陣を切り裂くスルーパス。
感動すら覚えるプレーぶりだった。
しかし、1点ぐらいでは、まったく安心していられない。
そんな思いの中、そのほんの数分後に、今度は乾が魅せてくれたのだ。
相手DFのクリアを拾った香川からマイナスに入ったボールを乾が目の覚めるようなミドルシュートを決めてくれたのだ。
またもTVの前で大声を出し、手を叩いて喜んでしまった。
香川と乾の関係性については、W杯直前のパラグアイ戦で何度も見せてくれ、西野ジャパン最大の武器になることになった。
乾は、以前から大好きな選手で、なかなかレギュラーに定着できなかったハリルホジッチ時代から、いつもなぜ使ってくれないのかと思っていた。
香川については、4年前のブラジル大会でのパフォーマンスがあまりに悪く、ブラジルの地でそのプレーを目の当たりにして以来、あまり好きではなかったが、先のパラグアイ戦での乾との連動性、また死に物狂いでピッチ上を走り回る姿を見て、改めて頑張ってほしいと思った。そのとき、今の日本代表には乾と香川はなくてはならない選手だと強く思ったものだ。
なんと、後半10分にも満たない時間に、日本が2-0とリードした。
ベルギーの焦りは明らかだった。
正直、2点差になり、もしかしてベスト8に進出できるかも、ブラジルとの夢のような対戦が実現するかも、といった思いが頭の中を巡らしたりしていた。
しかし、相手は、超強豪国ベルギーである。ベルギー史上最強といわれている超タレント集団だ。
とにかくゴールを奪われないでほしいと願いながら観ていた。
何度も危ないシーンはあったが、GK、DFを中心に何とか守りきっていた。
しかし、後半24分、ベルギーにゴールを奪われてしまう。ループシュートがGK川島の手の届かないところに吸い込まれるように入っていった。
そして、その5分後にもゴールを決められ、同点になってしまった。
2点差あったリードが、あっという間に消え去った。
これがW杯だ。
これが決勝トーナメントだ。
これがベルギーだ。
悔しいけれど、そんな思いが巡らされた。
しかし、まだ残り15分ある。さらに延長戦に入ることも可能なのだ。
ベルギーの怒涛の攻撃に、日本選手たちは耐え続けた。
日本も頑張って攻め続けた。しかしゴールを奪えない。
そんな中、後半アディショナルタイム、日本はFKのチャンスを得た。
キッカーは本田だ。本田ならやってくれるだろう、そんな思いもむなしく、惜しくも相手GKに弾き出された。
続いてCKだ。しかし、GKにキャッチされてしまった。
その次の瞬間、思い出したくもない光景が待っていることになる。
ボールをキャッチした相手GKから始まった超高速カウンターに、前がかりになった日本選手たちは戻れず、最後の最後でベルギーに仕留められてしまったのだ。
後半アディショナルタイム4分のことだった。
試合は終わった。
2-3。
ベルギー相手によく頑張ったと思う。
過去2回のベスト16とは明らかに違った。
選手たちのプレーに、心打たれた。
しかし、ベスト8進出はならなかった。準々決勝でブラジルと対戦する夢は砕かれてしまった。
これが現実である。
今大会、後半アディショナルタイムの最後の最後に決まる試合があまりにも多いが、日本もその餌食になってしまったことは残念でならない。
もう少しで延長戦に入るところだった。
少しでも長く、この日本代表の戦いを見ていたかった。
あまりの劇的さに唖然としてしまった。
本当に残念に思った。
しかし、それと同時にまったく怒りのような感情は出てこなかった。
本当によくやってくれたと思う。
西野監督をはじめ、日本代表の選手たちは、本当に頑張った。選手たちのピッチ上での戦いぶりには、感動すら覚えた。
この戦いぶりに、怒る日本人は誰もいないだろう。
過去のW杯のいろいろな試合が、その観戦状況とともに、鮮明に記憶されているが、間違いなくこの試合を一生忘れることはないだろう。
やはりW杯は特別なものであると再認識させられる。
4年に一度のW杯ではあるが、出場できない国のほうが圧倒的に多い。
サッカーが盛んなヨーロッパの強豪国も、今大会のイタリア、オランダのように、毎大会、必ずといっていいほど出場できない国が現れる。
それに比べて、日本は、1998年から6大会連続で出場し、今大会では、決勝トーナメントにまで進出してくれた。
ここまで、日本国中に希望を与え、楽しませてくれたのだ。
3ヶ月前、ハリルホジッチが解任され、西野に監督が代わったとき、日本国中で賛否両論あった。いや、否のほうが圧倒的に多かったように感じた。
しかし、私は、よくぞこのタイミングで日本サッカー協会は英断してくれた、と思った。
指揮官に一貫性がなく、個々の選手たちから信頼関係を得られなければ、戦う集団にはなりえない。監督と選手たちの意識のずれが発生すると、選手同士に迷いが生じ、思い切って戦えなくなる。
だから、それを解消すべく、ギリギリのタイミングで苦渋の決断を行った日本サッカー協会には、エールを送りたいと思った。
しかし、西野ジャパンは就任後2戦ではまったくいいところなく惨敗。
勝利を得られたのは、W杯直前の最後の試合だった。しかし、ここで初めて試した布陣がおもしろいようにはまった。
W杯に入り、監督の采配ははまった。はまり続けた。
周りからのいろいろな意見はあるが、すべては信念を持って決断した西野監督自身の采配によるものだ。
そして、監督を信じ、選手たちは一心不乱にプレーした。
出場機会を得られず悔しい思いをした選手も当然いるはずだ。しかし、レギュラーもサブも一つになった。
そして、グループリーグを突破し、最後は、ベルギー相手に素晴らしい戦いを見せてくれた。
日本代表の選手、監督、コーチ、関係者たちへ、本当にありがとうと言いたい。
皆さんと一緒に、素晴らしいときを過ごさせてもらいました。
まずは、ゆっくり休んでください。
そして、この経験を糧に、さらに強い日本代表を見せてください。
頑張れニッポン!