おめでとう、澤、佐々木監督、そしてネイマール! ついに日本人がバロンドールを獲った!

1月9日(月)、ついに2011年度のFIFAバロンドールの受賞者が決定した。

私は、この日、出張でサンパウロにいた。授賞式の模様は、こちらのスポーツチャンネルで午後4時から生中継された。

その時間は、移動中で飛行機の機内だった。

何といっても、注目は、澤が日本人初のバロンドール(年間MVP)を獲るかどうかだ。

ノミネートは3人に絞られている。他の二人は、昨年度まで5年連続で獲得しているブラジルのマルタと、アメリカのFWワンバックだ。

2011年の実績を見れば間違えなく澤だろう。しかし、何が起こるかわからない。女子サッカーと言えども、ブラジルとアメリカと日本だったら、W杯で優勝したとはいえ、格的には日本がかなり下と言わざるを得ないだろう。澤が獲るだろうとは思っていたが、確信は持てていなかった。

私が、澤受賞の快挙を知ったのは、その日の夜、会社の同僚と食事をしていた日本食レストランの中だった。

このレストランでは、TVで日本の民放が放映されていて、その時間、日本は朝早い時間だったので、目ざましテレビのような生放送の情報番組が流されていた。

まずは、「次はスポーツです」という感じで、本編に入る前に画像だけ出たのだ。まず、その画面を見て、澤は獲れなかったのかと思った。というのも、その紹介映像が、着物姿の澤がまったく笑顔のないものだったからだ。もし受賞していたのなら、笑顔でトロフィーを持っている映像が映ると思ったからだ。

しかし、CM後の本編では、澤受賞のニュースだった。

本当に獲ったのだ。獲るだろうとは思っていたが、改めてこの現実を目の当たりにすると、なでしこは、澤は、本当にすごいことをやってのけたんだなぁ、と感慨深く思う。

これは、本当にすごいことだ。

女子では、今まで過去3人しかバロンドールを獲った人がいない。

最初が2年連続で、アメリカの国民的ヒーロー(ヒロインか)ミア・ハム。その次がドイツのプリンツが3年連続。そして、去年まで5年連続でブラジルのマルタである。

すべて国民的英雄、いや世界的な超有名選手で、複数回獲っているのだ。

男子でいえば、メッシ、クリスチアーノ・ホナウドホナウジーニョ・ガウーショ、ジダンホナウドフェノーメノなどクラッキ中のクラッキだけが手にしてきたのだ。

そんな中に、日本の澤が選ばれたのだ。これは、本当にすごい。同じ日本人として誇りに思うぐらいだ。

そして同時に、最優秀女子監督賞でなでしこの佐々木監督も選ばれたことを知った。これも本当にすごいことだと思った。

さて、その日の夕食を済ませ、ホテルに戻ったのは夜の10時ごろだった。

すぐに部屋のTVをつけると、スポーツチャンネルで再放送のバロンドール授賞式をやっていた。当然このTV画面を食い入るように見た。

ちょうどTVをつけたら、アレックス・ファーガソンがFIFA会長賞を受賞していたところだった。

ちょっと受賞の順番は忘れてしまったが、主要な賞の受賞シーンはすべて見ることができた。

最優秀女子監督賞は、なでしこの佐々木監督だ。

素晴らしいね。

"Norio Sasaki!"と呼ばれ、檀上に上がった。

そしてスピーチが始まる。

最初は英語だ。英語でしゃべるのかな、と思ったが、その後は日本語になった。私はその日本語のスピーチを堪能したかったが、放送ではその上にポルトガル語の同時通訳が入り、佐々木監督のしゃべる声はポ語に消されるようで聴き取りづらかった。しかし、堂々とした態度。立派な受賞スピーチだったと思う。

フェアプレー賞として、JFA(日本サッカー協会)が受賞した。

この時は、小倉会長と澤が檀上に上がり、小倉会長が英語でスピーチしていた。さすがにこのレベルの人になると、英語がしゃべれるんだなぁ、と思った。

そして、Puskas(最優秀ゴール賞)の発表である。

長男が「プスカス、プスカス」とよく言っていたが、プスカスの存在について、この時までよく知らなかった。

プスカスとは、FIFAの年間最優秀ゴール賞のことだったのだ。それも、このときまで知らなかったのだが、ネイマールが3人の最終候補者に選ばれていたのだ。

これには本当に驚いた。それも、セレソンの試合ではなく、ヨーロッパリーグ全盛のこの時代に超マイナーともいえるブラジルリーグでの対フラメンゴ戦でのゴールである。

これは、本当にゴラッソだった。サントスの試合はほとんどリアルタイムで見ている私だが、この試合は、去年7月に日本に一時帰国していたときに行われていたので、残念ながら見ていなかったのだ。

しかし、この日のネイマールは、大活躍ですごいゴラッソを決めたことは、かなり騒がれており知ってた。

この試合、このプスカスにノミネートされたネイマールのゴールでサントスは3-0とリードするが、結局ホナウジーニョ・ガウーショ率いるフラメンゴに5-4と逆転負けを喫してしまう壮絶な試合だったのだ。

他の2人は、メッシとルーニーだ。

私は、ルーニーの対マンチェスター・シティー戦でのゴールは、リアルタイムでTV観戦しており、これほど美しいゴールを見たことがないぐらいの衝撃を受けたことを思い出す。

さて、受賞式には、ネイマールも出席していた。

この受賞発表の際に、ノミネートの3ゴールの映像が映された。どれも美しいが、ルーニーのボレーが際立って美しいと思った。間違えなくルーニーだろう、と思っていたら、何とネイマールが選ばれたのだ。

これには、本当に驚いた。と同時に、嬉しく思った。

客席では、ルーニーとピケの間に座っており、檀上に上がって行った。

ポルトガル語でスピーチしたが、この日のネイマールは、いつもと雰囲気が違い、とてもかっこよく映った。

それにしても、ネイマールには驚かされてばかりだ。

私は、サントスファンでネイマールが大好きなので、これだけのネイマールフィーバーはとても嬉しく思うが、ちょっと騒がれすぎのような気もしてしまう。

確かに、ネイマールは凄い選手である。相当にうまいとも思う。

しかし、男子サッカー界がほぼすべてヨーロッパリーグだけを舞台にしているのに、ブラジルリーグを舞台にしている選手が一人だけFIFAからこれほどまでに評価されているという事実。これは、どうなのだろうか?

ちょっと前までネイマールは、必ずといっていいほどホビーニョと比較されていた。私は、ホビーニョのプレーを初めて見たのが、私がブラジルに住むようになった2005年以降なので、何とも言えないのだが、全盛期である2002~2004年ぐらいのホビーニョは、今のネイマールよりも凄いぐらいの活躍ぶりだったと思う。

しかし、ホビーニョはFIFAから、また全世界的にも、今のネイマールほどの評価は受けていないだろう。どうなのだろうか?

しかし、サントスファン、ネイマールファンとしては、とても嬉しいネイマールの受賞であった。

そして、最後は、女子・男子の順でバロンドール(年間最優秀選手賞)の発表である。

マルタ、澤、ワンバックの順に紹介され、プレゼンターのシャキーラが、”ホマレ、サワ!”と発表し、澤の受賞が決まった。

最前列でマルタとワンバックの間に座っていた着物姿の澤が、嬉しさを自分の中に秘めるようにして、壇上に上がった。

すべて日本語でのスピーチだった。これも、ポルトガル語への同時通訳の声に澤の日本語がかき消されてしまっていて聴き取りづらかったのだが、落ち着いた心のこもった澤らしいスピーチだった。

水色の着物が本当にきれいだった。着物姿での出席は大正解だっただろう。

男子は、当然の如くメッシだった。クリスチアーノ・ホナウドは欠席していた。聞くところによると、レアルの選手は翌日に試合を控えているとかで、すべて欠席だったようだ。

今回のバロンドールは、本当にすごかった。

日本人関係が3つも受賞し、それに加え私の好きなネイマールまで受賞したのだ。

翌朝、宿泊先のホテルの近くのバンカ(新聞スタンド)に新聞を買いに行ったが、ほとんどの新聞の一面がネイマールの写真だった。

スポーツ新聞の1紙は、早朝7時ごろにも関わらず最後の一つであった。バンカのおばちゃんは、「今日はサンチスタがたくさん買いに来たからね・・・」というので、「私もサンチスタですよ!」と言って、ネイマールが表紙の新聞を4紙勝ったのだった。

ブラジルでも、このバロンドールはかなり話題になっており、ネイマール受賞がトップニュース、それに次いでマルタが澤に破られた女子MVPについてだった。

本当に素晴らしいバロンドールだった。

この調子で、今年1年間、日本もサントスも快進撃を続けてくれることを願うのであった。