準決勝柏レイソル対サントス サントスはやってくれた。ネイマールはさすがとしかいいようがない。

12月14日(水)、こちらの時間で朝の8時30分から注目のサントスの初戦が行われた。

サンチスタの私にとって、これほど注目する試合はないだろう。相手が、日本の柏レイソル、それも日本で行われるのだ。

この組み合わせが決まって以来、私は、それこそ数えきれないぐらいの周りのブラジル人に、この話題で話しかけられた。私がサントスファンだと知ってのことで、「どちらを応援するのか?」というものがほとんどだ。

そんな注目の一戦だが、私はリアルタイムでまったく見ることができなかった。この日は、出張の予定が入っており、車で隣の州まで移動しなければならなかったからだ。

とにかく、私は、何が何でも、決勝でサントスとバルサの対戦が見たいと思っていた。そのため、相手はどこでも関係なかった。とにかくサントスに勝ってもらわなければならないのだ。

柏に対戦相手が決まったとき、かなり厳しい試合になるだろうな、と思った。

さて、私は、前半終了時に2-0でサントスが勝っているという情報をまず得ることができた。

しかし、サントスの守備の脆さを知っている身としては2点のリードがあるとはいえまったく安心できない。

試合の結果を知ることができたのは、試合終了から約1時間後の11時半ごろだった。休憩で寄ったレストランの店員に聞くと、「サントスが3-1で勝った」と言ってくれた。

ネイマールはどうだったか聞くと、「1点ゴールもしたし、一番よかったよ。」と言ってくれた。

これでやっと安心することができたのだった。

その後、昼食時にレストランのTVでスポーツニュースをやっており、ここで初めて映像を見ることができた。

サントスはいつもの純白のユニフォームだ。リベルタドーレスで使っていた緑と黄色のワンポイントが入ってるものだった。スポウンサーがBMGなのはいつもと同じだ。

ニュースなので、ハイライトしかやらない。まずは、ネイマールの先制ゴールだ。これは、まさにゴラッソだった。DFをいとも簡単に交わし、左足で振り抜いた球はきれいな弧を描き、ゴール左隅に吸い込まれていった。

ネイマールは、ブラジルにいるブラジル人が驚くぐらいに日本で注目を浴びていた。今回のクラブW杯は、バルサのメッシとサントスのネイマールの2大クラッキの戦いであると報道され続けていた。

ほとんどの日本人、いや世界中の人々はネイマールのプレーを知らないだろう。どこの馬の骨ともわからない19歳の若者が、史上最高の選手とも言われている世界のメッシと比較されているのだから、ネイマールの受けていたプレッシャーは相当なものだったと思う。

それを、いきなり、先制点を決めて、その期待に応えてくれたのだ。このシーンを見て、私は涙が流れそうになった。

その5分後に、次はボルジェスだ。ゴール前で受けた球を、DFを交わしながら隙を見つけて見事にゴールに突き刺した。これぞストライカーといったゴールだ。これは、ボルジェスの得意のパターンなのだが、それをこの世界中が注目する試合で早々に決めてくれたのだ。

ボルジェスも相当嬉しかっただろう。ブラジルリーグ得点王の意地もあるだろう。そして、かつてプレーしていた日本でである。いつものようにゴール後はバク転して喜びを表していた。

しかし、後半早々、ジョルジ・ワグィナーからのCKを酒井に頭で決められ、1点差になってしまうが、その後、ダニーロがFKから直接決めて3点目が入った。

その後、かなり柏の攻撃を受けていたが、3-1でサントスが勝利したのだった。

そして、夜ホテルに戻り、ヤフージャパンなどで、この試合についての記事を調べると、「度肝を抜いたネイマール」だのでサントス圧勝のような感じを受け、私はとても嬉しい気持ちになっていた。

しかし、その後、自宅でTVを見た妻と長男と電話で話したら、実際はちょっと違う感じなのだ。まず、妻が発した言葉は、「サントスはいつものようにまったく強くなかった」だった。これは、いつものように弱かったということだ。

「得点は、すべて個人技。柏に攻められる場面が多く、とても危なかった。」とのことだった。

ちょうど、電話をしていたとき、TVで再放送を見ていたようで、長男は、「今、ボール・ポゼッションが出た。柏53、サントス47だって」と聞いたときには耳を疑った。ボール支配率でサントスは負けているのだ。

ということで、翌日、私は自宅に戻り、ビデオで撮っておいてもらったこの試合を見ることにしたのだった。

最初から、ネイマールはかなり目立っていた。ボールを持つ機会がかなりあり、独特のフェイントなどで見せ場をつくっていた。

しかし、この前半19分のゴールは素晴らしかった。アシストがガンソというのもよかった。ネイマールの大親友ガンソは、常々、「ネイマールにパスを出して決勝点を決めて世界一になりたい」と言っていた。それが、先制点として実現させたのだ。

そして、その5分後のボルジェスのゴールも、ネイマールのゴールに劣らないぐらいのゴラッソだった。左サイドからだったので左SBのドゥリヴァウからだったのだろう、ゴール前でパスを受け、DF2、3人に囲まれたが、間合いを取り、わずかな隙を見つけ、右足で振り抜き、ゴールを決めたのだ。

その後は、2点取ったことで、サントスの攻撃は多少トーンダウンしたのだろう。無理していない印象を受けた。

そして、後半早々に、サントスの悪い癖が出てしまった。

CKから、サントスのスカウトも注目するという右SB酒井に頭で決められ、1点差になってしまうのだ。これなんか、まったくマークができていない。酒井はフリーだった。

本当に、サントスの守備はざるのようだ。

その後、直接FKをエラーノでもなくネイマールでもなくガンソでもなく、ダニーロが決めたのだ。この3点目はサントスにとって大きかっただろう。

しかし、その後は、何度も柏に攻撃を許していた。そのほとんどが、右SB酒井の突破からだったように思う。

この試合、柏で一番目立っていたのは、レアンドロ・ドミンゲスでもなくジョルジ・ワグィナーでもなく、酒井だった。ゴールを決めただけではない。攻撃の基点として相当に機能していた。さすが、注目されてるサントス戦だけあって、相当に存在感を醸し出していた。

そのまま3-1でサントスが勝ったのだった。

さて、この試合、確かに後半、柏の攻撃はよかった。しかし、サントスがまったく弱かったようには思えなかった。

ただ、サントスの守備は、いつものこととはいえ、このままだとかなりやばいと思う。これは、監督のムリシー・ハマーリョも言っていた。「このままではバルサに通用しない」と・・・。

左SBのドゥリヴァウが相当に悪かった評価だ。私は見ている限り、あまり印象に残っていないのだが、これだけ(サントスの)左側が突破されているので、そうだったのかもしれない。

このドゥリヴァウ、本来のポジションはCBなのだが、左SBのレオが怪我をしているため、ここ数か月このポジションでプレーしているのだ。ブラジルリーグなどでは、本職でないわりにはよくやっていると思っていたが・・・。

しかし、サントスにとっては上々の出来だろう。

何といっても、最低限の目標である「決勝進出」を果たすことができた。去年のインテルナシオナルの例があるので、サントスも相当にこの初戦に集中してきた。その甲斐あって、その第一目標は突破できた。

そして、ネイマールボルジェスが決めたことだ。特にネイマールが決めたのは本当に大きい。とてつもない重圧から解放され、その素晴らしいプレーを魅せてくれた。これで、調子に乗れる可能性は高い。

ガンソもよかった。私が8月に観たガンソとは別人だった。あれだけひどかったのが、よく回復したと思う。

それにしても、私の大好きなサントスが、日本で日本のチームと対戦し、その存在を魅せつけることができたのだ。これは、本当に嬉しいことだ。

いよいよ決勝である。それも、我がサントスが世界最強と誰もが認めるバルセロナと対戦するのだ。ついに夢にまで見たネイマール対メッシの対決が実現するのだ。

こんなに楽しみなことはないだろう。

バルサは、とにかく強い。しかし、サントスだってチャンスはあるだろう。

どんな展開になるだろうか?

そんな楽しみな決勝戦、結果はもちろん大切だが、それ以上に素晴らしい試合を期待したい。