決勝サントス対バルセロナ この試合は一生忘れないだろう

12月18日(日)、こちらの時間で朝8時30分からこの試合は行われた。

この衝撃は、一生忘れられないだろう。

この試合について記述しようと思っているうちに、早3日が経ってしまった。

こちらでの反応は、翌日の新聞などは、一般紙でもほとんど一面に大きく写真入りでトップニュースとして扱われていた。

しかし、サントスは完敗したが、ほとんどサントスを誹謗中傷するものは一切ないといっていいだろう。バルサの強さを称えるものがほとんどだった。

この試合、始まるまで、本当に楽しみだった。本当に楽しませてもらった。

日本のメディアに、私の大好きなサントスが、今まで皆無だったものが、いきなり大々的に紹介されており、毎日インターネットを開くのが楽しみだった。

そして、間違えなく現在、世界最強クラブといわれているバルセロナと我が応援するチーム、サントスが戦えるのである。その上、仮にもその戦いに勝てば、世界一の称号が与えられるのである。それも、その試合は、我が祖国、日本で行われるのである。

これほど嬉しい、そして楽しみなシチュエーションはないだろう。

しかし、その楽しみは、試合開始1分後には崩れ落ちることになってしまったのだ。

この日、私は朝5時ごろに目を覚ました。

すぐに、TVのスポーツチャンネルをつけ、まだ記述していなかった、サントスが柏レイソルに勝った準決勝のゲームについての文章を書き始めた。

途中、こちらの時間で5時30分から柏レイソル対アルサッドの3位決定戦が行われ、その中継を流していたが、ほとんど見ることもなかった。結果は、残念ながらPK戦の末、柏は負けてしまった。

文章を書き終え、愛犬の散歩にでも出かけようかと思っていたのだが、いつの間にか8時になってしまい、犬の散歩はあきらめ、シャワーを浴び、身支度を整えることにした。完璧な状態で試合を一部始終見たかったからだ。

一緒にシャワーを浴びた次男は、髪型をネイマールにしてほしい、と言うので、ジェルをこれ以上ないぐらいにつけ、モヒカンにしてあげた。

試合開始15分ほど前には、完璧な状態でTVの前に座ることができた。私も長男も次男も、この日は妻までもが、サントスのユニフォームを着用していた。

選手が入場し、あっけないぐらい早く、試合が開始された。バルサが自陣でパスを回す。なかなか、攻撃を仕掛けない。しかし、すぐに、バルサの猛攻が始まった。

バルサの素早いパス回しに、サントスはどうすることもできなかった。開始1分で、力量差は誰の目にも明らかだった。サントスの選手は、皆が皆パニックに陥っているようだった。

こんなサントス、というか、こんなゲームは見たことがなかった。

前半16分、手玉にとっていたバルサに先制点が入った瞬間、これはダメだと思ったのと同時に、この先何点入ってしまうのだろうか、と思わざるをえなかった。

そのほんの4分後には、またもや簡単に追加点が入ってしまった。

私は、去年10月にスペインに旅行し、バルサの試合を2試合観ている。リーガ・エスパニョーラの対バレンシア戦とチャンピオンズリーグのグループリーグの対コペンハーゲン戦である。

その時、確かに強いのだが、攻撃一辺倒で守備は若干脆く感じ、まるでサントスのようなチームだなぁ、と思ったものだった。それよりも、マドリッドで観たレアル・マドリッドのほうがかなり強く感じられたものだった。

しかし、現実は私の感じたものと違っていた。私のサッカー眼も、相当当てにならないと言わざるをえない。

この決勝戦を前に、自分なりにスコアの予想などもしていた。5-0でバルサが勝つか、2-1でサントスが勝つかそのどちらかだと思っていたが、希望的な観点から、私は、前半0-0で終わり後半早々にネイマールが先制点を挙げ最終的に2-1でサントスが勝つと言っていた。

結局、その悪い方の予想に近い結果になってしまった。

サントスとバルサを比べたら、それは、バルサの方が力は上だとは思っていた。しかし、ここまで差があるとは思ってもいなかった。想像を絶するくらいの力量差だった。

すべてにおいて、サントスよりバルサが上だった。

一番感じたのは、スピードだ。普段、まったく感じていなかったが、サントスのサッカーは、いやブラジルのサッカー全般といったほうがいいだろう、ヨーロッパのサッカーに比べて、数段にスピードがない。

サントスがいざマイボールになっても、バルサの選手たちが、すごいスピードでプレッシャーにくるので、サントスの選手たちは、自分たちのペース、間合いでプレーすることがまったくできていなかった。

ほとんど、サントスはボールすら持たせてもらえなかった。終始バルサのボール支配率は75%程度。こんな一方的な試合は滅多にないだろう。

結局、最後まで具体的な解決策を見つけることなく、サントスは、容赦なく打ちのめされたのである。

10点ぐらい入ってもおかしくなかったが、GKハファエロの好セーブなどもあり、何とか4点で抑えた。

サントスの選手たちは、今まで味わったことのない恐怖を90分間味わったことだろう。

私は、悔しいという以上に、ただただバルセロナというチームに感服してしまった。

そして、時代は、南米、ブラジルではなく、ヨーロッパ、スペインであると改めて思わされた。

この試合を見て、このチームには、100回やっても100回とも負けるだろうなぁと思わざるを得なかった。

しかし、サントスだって、サッカー王国の名門チームの意地があるだろう。

自分たちが今まで誇りを持ってやってきたサッカーが、まったく手も足も出ない状態だったのだ。自分たちのサッカーと、世界一のサッカーには歴然とした差があることを思い知らされたのだ。

サントスの選手たちにとって、これほどショックなことはないだろう。

いや、サントスだけではない、ブラジル全体、いや南米全体が衝撃を受けているはずだ。

サントスは、決して強くはないが、弱くはない。リーグ戦の結果は芳しくなかったが、他のブラジルのチームと比べてもまったく遜色ない。現在のブラジルを代表するチームとしたら、スタープレーヤーも揃っているし、サントスはかなり相応しいと思う。この日は、まったく披露することができなかったが、その個人技溢れる魅せるサッカーは、ブラジルでは「フッチボール・アルチ(芸術的サッカー)」とすら言われているのだ。

サントスの選手たちは、相当に悔しい思いをしただろう。しかし、この舞台で、バルセロナと真剣勝負ができたことは本当によかったと思う。

試合後のインタビューで、「本当に勉強になった」とネイマールがさかんに言っていたように、本当に貴重な経験ができたと思う。

だからこそ、サントスにはぜひリベンジを果たしてほしい。

サントスは、ここで足りないとわかったことを改善し、チーム力を上げて、ぜひ来年のリベルタドーレスでも優勝してほしい。

そして、来年の同じ舞台で、ヨーロッパのチームといい勝負をして、ぜひ勝ってほしい。

それにしても、クラブチームの国際試合は、本当にいいなぁと思った。

ナショナルチームでの国際大会は当たり前だが、クラブチームもどんどん国際大会をやってほしいと思った。親善試合でもいいので、どんどんやってほしい。それは必ず、クラブの強化につながるし、何よりクラブチームのファンにとっては、本当にたまらないと思う。南米とヨーロッパの強豪チームの対戦など、どれも本当に興味深い。

試合終了後には、表彰式があった。

個人賞として、ネイマールが3番目の賞、シャヴィが2番目の賞、そして大会MVPは文句なくメッシが獲得した。

私は、ネイマールの姿を見て、涙が出そうになった。

ネイマールは、本当に成長したと思う。今年のネイマールはすべてにおいて、去年のネイマールとは別人である。去年は、監督に罵声を浴びさせるとか、マスコミに対するインタビューを無視するとか、態度の悪いことが度々あった。しかし、今年は、本当によくやっている。インタビューには必ず快く受けているし、相手選手に対しても、必ずリスペクトの態度で接している。本当に立派になったものだ。

表彰式でも、シャヴィともきちんとお互いに健闘を称えあえ敬意を持って接していたし、メッシに対しても、敬意を持って接していた。こんなシーンが見れただけでも感動である。

これで、サントスの2011年シーズンは終了した。

サントスにとって、最後の試合は、こんな形になったが、今年は、決して悪い年ではなかった。素晴らしい年だった。

強豪ひしめくサンパウロ州選手権を去年に引き続き連覇し、6月には悲願のリベルタドーレスで48年ぶりにタイトルを奪取したのだ。そして、ネイマールリベルタドーレス、ブラジル選手権でMVPを獲得し、名実ともにブラジルを代表するプレーヤーに成長したのだ。

私は、本当にサントスのファンであることを嬉しく思う。

そして、来年2012年は、サントス創立100周年である。

100周年を迎えるに当たり、バルセロナは、サントスにいろいろなことを教えてくれた。

今まで以上に強くなり、100周年である2012年を2011年以上に素晴らしい年にしてほしい。

サントスには、心を込めて、今年1年間お疲れさま、そしてありがとう、と伝えたいと思うのである。