女子サッカー準決勝 圧倒的に攻め続けたブラジルはスウェーデン相手にPK戦で散る!
いよいよサッカーは準決勝に入った。
女子サッカーでは16日(火)(日本時間17日(水))に、そして男子サッカーでは17日(水)(日本時間18日(木))にそれぞれ2試合ずつ行われる。
女子サッカーのブラジルは、16日(火)午後1:00(日本時間17日(水)午前1:00)から、リオデジャネイロのマラカナン・スタジアムでスウェーデン相手に準決勝の試合が行われた。
サッカーは、ブラジル全土の6都市が会場になっており、準決勝でやっとリオデジャネイロのマラカナン・スタジアムで戦うことができるのだ。
さて、試合は、開始早々から完全なるブラジルペースだった。絶対的なエースのマルタがこの日は2トップの右に位置し、この場所で攻撃の基点となっていた。シュートまではいくがゴールだけが決まらない。これは、前試合の準々決勝とまったく同じだった。
スコアレスで延長戦に入ったが、ここでブラジルは、クリスチアーニを投入した。クリスチアーニは、グループリーグのスウェーデン戦で怪我をしたらしく、それまではレギュラーで出ており、その試合以来の出場となったのだ。しかし、本調子ではないようで、迫力不足は否めなかった。
ブラジルは44本シュートを放つがゴールを決めることができなかった。正直、応援している身からすると、相当にストレスが溜まった。
対するスウェーデンはシュート6本。ボールポゼッションはブラジルが65%。完全に一方的な試合だった。
さすがに、中1日の過密日程を続けてきただけあって、延長戦に入ってからは、特にブラジルの動きは悪かった。前線に4人残すが、中盤があいているので、本来細かくつなげた方がゴールの確率は高まるが、ロングボールに頼るだけになっており、前線の選手の疲れもあり思うように動けず、まったくうまくつながらないのだ。
結局ゴールを決めることができず、2戦連続でスコアレスでPK戦になった。
これは、一方的に攻め続けたブラジルにとっては、痛恨ともいえた。
PK戦ではブラジルが先攻だったが、一人目のキッカーに、前試合のPK戦で止められたキャプテンのマルタが出てきた。
気迫のこもったキックは見事にゴールマウスの中に入っていった。
魂を感じさせるマルタらしいキックだった。さすがだと思った。
2人目はクリスチアーニが蹴り、相手GKに止められたが、直後のスウェーデンのキックをGKバルバラが止めてくれ、タイをキープできた。
しかし、5人目のキッカーになった途中出場のアンドレッサの蹴った球は相手GKに止められてしまった。続くスウェーデンのキックに対してGKバルバラの神懸りに期待したが、決められてしまい、女子サッカーブラジルの戦いはここで終わってしまった。またしても、金メダルを得ることはできなかった。
今大会、サッカー競技が始まり開幕2戦でまったくゴールを決められず勝つことができなかった男子サッカーはブラジル国民に愛想をつかされ、対照的に、幸先よく初戦、2戦目を快勝した女子サッカーに国民の期待は高まっていた。
しかし、皮肉なことに、そんな期待を受けていた女子サッカーは、グループリーグの3戦目から3戦連続でスコアレスドローという不本意な試合を披露してしまうことになってしまったのだ。
ブラジルはサッカー競技で、過去、男女ともにオリンピックでは金メダルを取れていない。
今回は地元開催であり、優勝候補の筆頭のアメリカも準々決勝で敗れていたので、絶好の機会だと思われた。が、ゴール欠乏症に陥るという罠にはまってしまった。
選手たちの無念ぶりは相当なものだろう。
こんな状況の中、選手たちには残酷だが、3位決定戦を戦わなければならない。それだけはきっちり勝って、メダルだけは獲得してほしいと思う。
3位決定戦は、19日(金)午後1時(日本時間20日(土)午前1時)に、もう一つの準決勝、カナダとドイツの敗者とサンパウロのアレーナ・コリンチャンスで行われる。
そして、明日は、男子サッカーだ。
ブラジルには、女子の無念さを晴らすべき、ゴールを決めきちんと勝って、決勝進出を決めてほしいと思う。
前半戦を振り返る 競泳編
リオ五輪の前半戦、日本のメダルラッシュのスタートダッシュの成功にもっとも貢献したといっても過言ではない水泳について、振り返ってみたい。
競泳は何といっても、競泳競技初日、6日(土)(日本時間7日(日))の男子400m個人メドレーに尽きるだろう。
萩野公介と瀬戸大也の同級生対決。どちらが勝っても不思議でないほど高いレベルのレースが繰り広げられた。
予選のタイムは、瀬戸が2位で萩野が3位。1位は予選で瀬戸と同組で競り合ったアメリカのケイリシュだった。
決勝は、日本時間7日(日)午前10:03だった。ちょうど、この日この時間、私は所用があって羽田空港に行かなければならなかった。
まず羽田空港に着き、案内所で、オリンピックの中継などやっているTVが設置されている場所を聞き、大急ぎでその場所に向かった。
甲子園を放映していたら嫌だなぁと思って向かったら、なんと、どうでもいいバラエティー番組が放映されていた。
もう1箇所あるというので、そちらに向かったらちゃんとオリンピックの競泳が放映されていた。既にレースは始まっており、最後のターンを折り返したところだった。
萩野がトップでケイリシュが萩野に追いすがっており、瀬戸は少し遅れていた。萩野はそのままトップでゴールし、少し離れて瀬戸が3着でゴールした。
ちょっと残念に思ったのは、決勝で隣同士で泳げなかったことだ。もし、2人が隣のレーンで泳いでいたら、多少は違った結果になっていたかもしれない。
しかし、歴史的瞬間を目の当たりにでき、私自身感動した。
オリンピックで日本人選手が表彰台に2人上がるというのは、ちょっと最近見たことがないと思う。それぐらいの快挙だった。
この姿は本当にすがすがしかった。銅メダルの瀬戸は本当に悔しかったと思うが、笑顔でライバルの萩野を称えている。お互いがお互いを称え高め合っている姿には感動を覚える。
このレースを皮切りに日本競泳陣は快進撃を続けることになる。
9日(火)(日本時間10日(水))にベテラン松田丈志、萩野公介などを擁した男子800mリレーで銅メダル、同日、坂井聖人が男子200mバタフライで銀メダル、10日(水)(日本時間11日(祝))に星奈津美が女子200mバタフライで前大会のロンドン五輪に引き続き銅メダル、そして11日(木)(日本時間12日(金))に萩野公介がレジェンド、フェルプスを破ることはできなかったが銀メダル、そして圧巻だったのが、同日、本大会競泳選手団のキャプテンの金藤理絵が女子200m平泳ぎで金メダルを獲得したことだ。
ここ最近、オリンピックにおける競泳競技は非常に成果を上げていると思う。
これは、一発勝負という公明正大な選考方法も関係しているのではないだろうか。
そしていつも思うのだが、個人競技なのだが、チームとして非常にまとまっていることだ。
今回、キャプテンにベテランの金藤理絵が選ばれ、見事にその責務を全うした。
持病の腰痛で欠場などとの情報も錯綜したが、本当に出場でき、最高の結果を出すことができてよかったと思った。
また、今回の五輪で、特筆すべきことは、池江瑠花子についてだ。
まだ16歳になったばかりの高校1年生の彼女は、その美しくさわやかなルックスもあり、泳げば泳ぐほどに自己ベストを出して、話題性を振りまいてくれた。オールラウンダーの彼女は、数多くの種目にエントリーしており、最後のほうにはさすがに疲れが出ていたが、今後の水泳人生において、とても大きな経験をすることができただろう。今後がとても楽しみな選手だと思う。
最後に、ブラジル人選手について言及したい。
ブラジルの水泳選手といえば、2008年北京大会で金メダル、2012年ロンドン大会で銅メダルを獲得した自由形短距離のセーザー・シエロ・フィーリョが真っ先に思い出されるが、今大会では出場権を得ることができなかったようだ。
今大会での競泳では、メダルはゼロに終わったようだが、マラソンスイミングの女子10キロで、日系ブラジル人であるポリアーナ・オキモトが銅メダルを獲得している。
前半戦を振り返る 柔道編
8月12日(金)(日本時間13日(土))に行われた開会式で開幕したリオデジャネイロオリンピックも早いもので1週間以上が経過し、既に後半戦に入っている。
日本は、水泳、柔道、体操などの主要競技でスタートダッシュに成功し、いまだかつてないほどのメダルラッシュに沸いている。
そんな前半戦を競技ごとに振り返ってみたい。
まずは、日本のお家芸、柔道についてである。
柔道の初日、最軽量級の戦いについては先日書いたが、柔道はまさに紙一重の競技だと改めて感じさせられた。
そんな紙一重の競技で、男子は全7階級にてメダルを獲得、女子は全7階級中5階級でメダルを獲得という素晴らしい成績を残した。
競技の性質上、1回戦で負けてもなんら不思議ではないが、この成績は本当に立派だと思う。
しかし、同じ色のメダルを取っても、選手の境遇、経歴などによって、かなり状況は異なるように思う。
1日目の男子60kg級の高藤、女子48kg級の近藤の銅メダルに続き、2日目、男子66kg級の海老沼匡、女子52kg級の中村美里はともに銅メダルを獲得した。
海老沼は、2012年ロンドン大会に続き、2回目の代表。ロンドン五輪では、準決勝での誤審騒動が記憶に新しい。当時の柔道は、技での勝負が決まらない場合、3人の審判による判定で勝敗を決めていたが、ビデオ判定にまで持ち込まれ、判定の結果が覆るということがあった。この準々決勝では勝ち進んだ海老沼だったが、銅メダルに終わっていた。
海老沼は世界選手権では3連覇しているが、五輪での借りを返すべく今大会に臨んでいたが、残念ながら今回も銅メダルに終わってしまった。本人にとっては相当に無念だったと思う。
一方の中村も似たような境遇だ。世界選手権は3度制しているが、五輪では2004年北京大会で銅メダル、2008年ロンドン大会では初戦敗退で、今大会は何としても金がほしかったはずだ。笑わない柔道家として有名なようで、ぜひ金メダルを取って笑顔を見せてほしかったが、準決勝で世界ランキング1位の選手に惜しくも破れ、北京大会と同様に銅メダルを獲得した。
3日目は、男子73kg級の大野将平が日本柔道念願の金メダル、そしてロンドン大会で金メダルを取り野獣としてブレイクした女子57kg級の松本薫が銅メダルを獲得した。
この日のメダル決定の瞬間は、いずれもTVで見ていたが、大野は準決勝、決勝ともに一本で勝ち、勝っても多くを語らず、侍というか日本男児のたたずまいを感じさせられた。これぞ正当派の日本の柔道選手であると思わされた。
そして、野獣と呼ばれている松本だが、ロンドン大会ほどには野性味は感じられず、穏やかな感じを受けた。準決勝で敗れてしまったが、3位決定戦ではきれいな有効が決まり、銅メダルを獲得した。
4日目は、男子81kg級の永瀬貴規が銅メダル、そして女子63kg級の田代未来は準決勝で敗退し続く3位決定戦でも破れ今大会日本柔道では初めてのメダルなし、という結果になった。
田代は、五輪2連覇の谷本歩実がコーチを務めるコマツに所属しており、谷本によく似た選手のようなので、特に頑張ってほしかったが、残念な結果になってしまった。しかし、この結果を誰も責めはしないだろう。責められる必要はまったくないと思っている。
本人が一番悔しいことだろう。まだ22歳と若いので、これからリベンジを果たすべく頑張ってほしいと思う。
5日目は、男子90kg級のベイカー茉秋、女子70kg級の田知本遥ともに金メダルを取ってくれた。
この2つの金メダル獲得の瞬間を見て、本当によかったと思った。特に、田知本はお姉さんも柔道選手でリオ五輪を目指していたが選考されず、妹のフォローアップに徹したとのことで、姉妹2人で喜ぶ姿には感動させられた。
6日目は、男子100kg級の羽賀龍之介が銅メダル、そして女子78kg級の梅木真美は残念ながら初戦で敗退した。柔道というあやうい競技では、初戦敗退も十分に考えられるので、本人にとっては非常に残酷な結果だが、十分にありえる結果だと思った。古賀稔彦が監督を務める環太平洋大学所属の21歳。まだ若いので、これからも頑張ってほしいと思う。
そして、7日目の最終日、この日の戦いがもっとも印象深いといっても過言ではなかった。
男子100kg超級の原沢久喜が銀メダル、女子78kg超級の山部香苗が銅メダルを獲得したのだが、男子100kg超級には、この階級で世界選手権7連覇中で、ロンドン五輪の金メダリストである絶対的な王者、テディ・リネールが君臨していた。
私は、前回のロンドン五輪でこの階級は見ていないようで、この人の柔道を見たことがなかったが、非常に興味を持っていた。
今大会の準決勝ではじめて見ることができたが、この試合、あまり攻め込んでいる感じではなく、優勢勝ちを収めた。
そして、日本の原沢が決勝まで勝ち上がり、原沢にとって満を持して、絶対王者のリネールとの決勝戦に臨むことになった。
この対戦が決まり、なぜか私はとても楽しみな気分になっていた。原沢にとって失うものはないはずだ。どんな戦いが繰り広げられるのか楽しみだった。
そんな決勝戦は、ある意味、予想通りの展開だったが、非常に残念なものだった。
まず、開始早々に、原沢に警告が2度も立て続けに入ってしまった。これで、何もしなくても勝つことができるリネールはまったく攻めない姿勢を貫く。必死に組もうとする原沢を押さえ、柔道をしようとしないのだ。こんなリネールに対し、不思議なことに審判は一切警告を出さない。
会場からは、リネールに対して大ブーイングが起こっていた。
以前の私だったら、この試合を見て、怒りで爆発していただろう。
しかし、今の私は、激怒はしなかった。しかし、残念だな、と思った。
ブラジルで柔道は盛んだ。幼稚園などでの課外活動でも柔道や空手は一般的に行われている。
だから、ブラジル人の観客もそれなりに目は肥えている。
オリンピックの決勝という最高の舞台、それももっとも迫力がある最重量級だ。最高の戦いを見たいというのが、皆の共通認識だろう。
柔道という競技の理不尽さを感じたのは、2008年の北京五輪だった。
このときの谷亮子の試合を見て、柔道の本来の戦いに入る前に、まずは、襟の取り合いから始めなければならなく、また、すべてにおいてポイントで管理されてしまうことに、非常に違和感を覚えたものだ。
それまで、私が知っていた柔道は、山下康裕や古賀稔彦といった一本で勝負するものだったから、技が決まらず、相手の警告だけで逃げ回る柔道を見て、怒りに近いものを感じさせられたのだった。
当時は、日本の目指す武道としての柔道が、世界の主流となっている競技JUDOとまったく異なるベクトル軸で動いている気がして、日本の柔道界も戸惑っている感じがした。
そんな背景があったため、今回の原沢とリネールの決勝戦について驚きはしなかったが、当時感じたことがよみがえってきたのだ。
しかし、この戦いを見て、世界中に原沢の存在を見せつけたことだろう。何しろ、世界王者のリネールが原沢のことを怖がって逃げたようなものだから。
今回が、原沢とリネールは初めての対戦だったとのことだが、これからの原沢は楽しみだと思った。
ぜひこの悔しさを晴らしてほしいものである。
最後に、地元ブラジルの選手についても言及したい。
男子100kg超級のラファエル・シウヴァが銅、女子57kg級のラファエラ・シウヴァが金、そして女子78kg級のマイラ・アギアウが銅という結果になった。
特に、金を取ったラファエラ・シウヴァは、松本薫を彷彿させるような野性味あふれる雰囲気を醸し出していた。
前回金メダルの女子48kg級のサラ・メネーゼスは残念ながら準々決勝で敗退していたが、
ブラジルでも柔道は人気スポーツなので、複数のメダルが取れてよかったと思った。
今大会の日本柔道はすばらしい成績だった。
次は地元開催である、東京五輪である。
柔道発祥の地日本で、素晴らしい戦いを見せてほしいと思う。
女子マラソン サンボドロモ発着の風光明媚なコースだったが日本人選手は惨敗だった!
14日(日)午前9:30(日本時間同日午後9:30)、女子マラソンが行われた。
私自身、趣味としてマラソンを走っているということもあるが、その街の様子がよくわかるので、マラソンを見るのはとても好きだ。
以前なら、日本人にとってマラソンは男女ともにとても強い種目だった。
特に女子では、2000年のシドニー、2004年のアテネと2大会連続で金メダルを獲得していたが、その後の北京、ロンドンではメダルはおろか入賞も果たしていない。
今大会の代表は、昨年の世界選手権で7位入賞を果たした伊藤舞、そして、国内選考会で選出された福士加代子、田中智美の3選手だった。
特に、福士はマラソンでは始めてだが、オリンピックにはトラック競技の代表としてアテネ、北京、ロンドンと3大会連続で出場しており、また大胆な発言もあり、どのような走りを見せてくれるか注目していた。
さて、楽しみのマラソンコースだが、よく考えて設定されていたと思う。何と、スタートとゴールは、サンボドロモなのだ。
サンボドロモとは、リオのカーニバルの会場だ。リオのカーニバルは、世界的に有名だが、特設会場でなされていることはあまり知られていないだろう。以前は、公道で行われていたが、安全面から特設会場であるサンボドロモで行われるようになっている。
このサンボドロモは、ブラジルを代表する建築家オスカル・ニーマイヤーの設計で、私も、ブラジル在住中の2007年に一度、ここにカーニバルを見に来ている。あまりのスケールの大きさに圧倒されたことをよく覚えている。
そんな、リオデジャネイロの代名詞、リオのカーニバル会場のサンボドロモをオリンピック競技の会場にしてしまうのだから粋な計らいだと思う。マラソンとアーチェリーの会場になっていた。
今回のマラソンコースは、そんなサンボドロモを発着地点とし、セントロ(旧市街)を通り、グロリア湾沿いに周回を3周して、再びサンボドロモに戻ってくるコースである。
発着地点はとてもよいが、せっかくなので、3周の周回をするのではなく、随一のビーチであるコパカバーナまで行くぐらいのコースにしてもよかったかなとも思った。しかしながら、今回のグロリア湾沿いの周回コースでは、キリスト像で有名なコルドバードの丘に次ぐ人気スポットである砂糖のパンという意味を持つポンジアスーカルを正面に見ながら走ることができた。これはこれで素晴らしい景色だと思った。
さて、レースは序盤30人ほどの先頭集団を形成し、日本人選手3人もその中に含まれていたが、9キロ地点ほどで、先頭グループは2つに分かれ、日本人選手は後方グループに含まれてしまった。
その後、伊藤が遅れ、福士は一旦先頭グループに追いつくが、先頭グループをキープすることができず、遅れ始めた。
結局日本人選手たちは、そのまま先頭集団に戻ることはできず特に見せ場もなく、福士が14位、田中が19位、そして伊藤は44位という結果に終わった。
表彰台はアフリカ勢が占めた。
今回も残念ながら日本人選手は入賞することはできなかった。
レースを終えた選手たちのインタビューを聞くと、「とにかく暑かった」ようだ。
リオは暑いには暑いが、今、季節は冬だ。日本の夏に比べると、まだましな感じはするが、太陽の日差しはとても強いものがある。それが、ボディーブローのように体にダメージを与えたのだろう。
1~4位はアフリカ勢が占めたが、5位にベラルーシの白人選手、そして6、7、9位にアメリカの白人選手たちが入った。
この結果を受けて、日本人選手たちもやりようによっては、十分に入賞は狙えたのではないかと思った。
せめて、ある程度までは、先頭集団についていけるレース運びをしてほしかった、というのが正直なところだ。
しかし、強烈なプレッシャーの中でこの舞台に立っているのだ。3人ともに無事に完走できたことは、ホッとしたことだろう。
最後に1点、大会運営上、気になったことについて述べたい。
あまりにコースへの乱入者が多く現れたことだ。
ブラジルでは、国際的なマラソン大会をほとんど開催していないので、ブラジル国民にとって、マラソン競技がどういうものかわかっていない部分もあると思う。しかし、乱入者の行動は一歩間違えると大変なことになる。警備の警察官が、すべて排除していたが、あまりにその姿が目立ち、ハラハラさせられた。最終日には男子マラソンもあるし、防犯対策は今一度見直したほうがいいように感じた。
さて、次のオリンピックは、4年後、地元、東京開催となる。
かつては、お家芸と言われたマラソン競技。何とか、意地を見せられるような戦いが繰り広げられるよう、しっかりとした育成が必要だと感じた。
男子サッカー準々決勝 ブラジル、激しく荒れた試合を制し準決勝進出を決めた!
13日(日本時間14日)、男子サッカーは準々決勝4試合が行われた。
ブラジルは、コロンビアを相手に、13日夜10:00(14日午前10:00)、サンパウロのアレーナ・コリンチャンスで試合を行った。
ブラジルとコロンビアの対戦といえば、2014年W杯でのスニガのタックルによりネイマールが大怪我を負った試合がまずは思い出される。
今回はU23代表なので、コロンビアにはスニガもハメス・ロドリゲスも出ていないが、この組み合わせになり、因縁めいたものを感じさせられる。
そんな因縁めいた戦いは、激しく荒れた試合になった。
ブラジルの布陣は、前試合のデンマーク戦と同じだった。
デンマーク戦ではフッチボウアルチを魅せつけてくれたが、コロンビア相手にはなかなか思うように攻めさせてもらえなかった。
開始早々から、激しいファールの応酬になった。
そんな中、前半12分、ネイマールがファールで倒され、いい位置でのFKを得た。
これまでことごとく外しまくっていたネイマールだったが、ここでも当然のごとくネイマールがキッカーを務めた。
ネイマールが放ったボールは低い弾道で相手の壁をすり抜け、きれいにゴールマウスの中に入っていった。
ついにネイマールにゴールが決まったのだ。
これには、私も思わず叫んでしまった。
これは、ブラジルにとっても、そしてネイマールにとってもとても大きなゴールになった。
ネイマールもうれしかったことだろう。そしてホッとしたことだろう。あまりの喜びぶりに、ゴール後にはプラスチックでできた看板を壊してしまうほどだった。
前半12分というかなり早い時間帯にゴールが決まり、ブラジルにとってはだいぶ楽になったはずだ。
その後はブラジルが優位に試合を進めるが、一進一退の攻防が続いた。
しかし、それ以上に特筆すべきことは、とにかく荒れた試合になったことだ。特にネイマールに対するファールの応酬はすさまじかった。コロンビアベンチでは、ネイマールを狙えと指示されているのかと疑うほどに、ネイマールは徹底的に倒されていた。
まるで、南米のクラブ選手権であるリベルタドーレス杯を見ているようだった。
1点のリードでは、PKの危険性もありえるし、まったく安心できない。
しかし、なかなか追加点は奪えなかった。
ブラジルの交代の最初のカードは、後半22分のガビゴウだった。
この荒れまくっていた試合で、一番冷静に見えたガビゴウをなぜ代えるのかと疑問に思った。
この試合、ネイマール、そしてガブリエウ・ジェズスは特にファールを受けており、この2人は特に冷静さを失っているようだったが、ガビゴウは常に冷静に見えた。
中2日の過密日程で、選手たちには相当に疲れがみえた。
ルアンなどもボールを追いかけられないシーンなどが見受けられ、同じポジションのフェリペ・アンデルソンに代えてもいいんじゃないかと思ったりしたが、その後そのルアンが決定的な仕事をやってのけてくれた。
ネイマールからの横パスを受けたルアンがミドルシュートを決めてくれたのだ。
このゴールは、本当に大きかった。
インサイドでコントロールしきれいな弾道を描く、まさに技ありのゴールだった。
前試合のデンマーク戦でもそうだったが、この日もゴールを決め、ルアンの評価は相当に高まっていることだろう。私もかなりいい選手だと思う。現在、ブラジル国内の名門クラブ、グレミオに在籍しているが、ヨーロッパのクラブも注目しているようで、今後の動向が気になるところだ。
ブラジルは2-0で勝つことができ、準決勝進出を決めた。
怪我をさせないように、終盤ネイマールを交代させてもいいかな、と思ったが、無事に怪我人が出なくて本当によかったと思った。
試合終了後、ネイマールを中心としたブラジルの選手たちの喜びようはすごかった。やはり、相当なプレッシャーにさらされているのだろう。
また、ネイマールとともにOA枠で出場しているヘナト・アウグストは、年長者としての自覚からか、常にネイマールを、そしてチームをフォローしている姿が見受けられる。2試合目では大ブーイングを受けていたが、3戦目、そしてこの準々決勝で守備的なボランチとして機能しており、十分に役割を果たしていると思う。
ブラジルの準決勝は、韓国を破ったホンジュラスを相手に、17日(水)午後4:00(日本時間18日(木)早朝4:00)からリオデジャネイロのマラカナン競技場で行われる。
ブラジルにはぜひ勝って、決勝進出を決めてほしいと思う。
男子サッカー日本 3戦目勝利するも残念ながらグループリーグ敗退!
10日(水)午後7:00(日本時間11日(木)午前7:00)から日本のグループリーグ第3戦がサルヴァドールのアレーナ・フォンチノーヴァで行われた。対戦相手はスウェーデンだ。
1分け1敗で迎えたグループリーグ最終戦であるこの試合、日本は自力での決勝トーナメント進出はできないが、少しでも可能性をつなげるためには勝利が求められた。
サルヴァドールは、私がブラジル在住中住んでいた街でまざにホームタウンともいえる場所だ。もしまだ住んでいたら、この試合、そしてこの日この試合の後に同じスタジアムで行われたブラジル戦はぜひ観に行きたかったと思う。
私は、サルヴァドールには2008年~2012年まで住んでいたが、当時このフォンチノーヴァは使われていなかった。
フォンチノーヴァは長年、サルヴァドールで圧倒的な人気チーム、バイーアのホームスタジアムとして使われてきたが、2007年11月、当時3部で戦っていたリーグ戦で2部昇格を決め歓喜に沸く観客が観客席で飛び跳ねたことが原因で観客席が落下、死者が出るという事故が発生し、長らく閉鎖されていたのだ。2014年W杯での使用が決まり、取り壊し、同じ場所に新築され、2013年に完成したスタジアムである。今では地元のチームであるバイーアのホームスタジアムとして使われているが、バイーアはブラジル国内でも相当な人気チームで集客力もあるので、マナウスのアレーナ・アマゾニアとは違い、十分にやりくりできていると思う。
サルヴァドールの中心街からほど近い場所にあり、私の在住当時は、ほとんど工事に費やされていた。
私は、2014年のW杯で2試合、このスタジアムで観戦したが、感慨深いものがあった。
今大会のグループリーグは、同じ日に同じスタジアムで2試合ずつ行われており、この日のフォンチノーヴァは、現地時間で夜7:00から日本戦、そして夜10:00からブラジル戦が行われた。
残念ながら、この日本戦では、観客の数は相当に少なかった。チケットを持っている人は両試合観ることができるが、多くのブラジル国民にとっては、日本戦は前座感覚で、あくまでも2試合目に行われるブラジル戦だけに興味を持っていたようだ。これは、ちょっと残念に思う。
さて、日本の戦いについてだが、2試合目のコロンビア戦は1試合目のナイジェリア戦に比べて劇的によくなったと思う。
2試合目では、フォーメーションも1トップから2トップに変え、GKに中村、中盤に矢島、井手口、FWに浅野といったように先発を初戦から4人変えており、見違えるようにいい戦いができていた。完全に勝ち試合だっただけに、引き分けという結果は非常に残念に思った。
そしてこの3戦目の先発は、左SBを前試合で痛恨のオウンゴールをしてしまった藤春に変え亀川を、そして中盤は、大島、南野が復帰した。
さて、試合は終始日本ペースで進んだ。
対戦相手のスウェーデンはヨーロッパ予選を優勝して今大会に臨んでいる強豪で、2戦目までの勝ち点は日本と同じ1分け1敗で1という状況なので、もっとガツガツくるかと思ったが、意外にもおとなしく感じられた。
日本はよく攻めるが、ゴールが決まらない。1、2戦目でかなりの活躍をしていた中島の判断がいまひとつなシーンがいくつか見受けられた。もっと積極的にゴールを狙ってほしいと思ったりした。
また、せっかくのスピードスターの浅野がいるので、もっと浅野を使う動きがあってもいいと思った。前大会であるロンドン五輪では同じくスピードスターの永井を十二分に有効利用していたのとは対照的だ。
ゴールを奪えないまま後半に入ったが、後半12分に驚いたことに南野を下げたのだ。南野はよくボールを収めてくれるしドリブル突破も魅力的だ。もっとも重要な選手の一人といっても過言ではないだろう。
また、後半16分に今度は浅野を下げたのだ。これも残念に思った。アーセナルに移籍しもっとも期待されたといっても過言ではない浅野だったが、大きなインパクトを残すことなくピッチを後にしたのだった。
しかし、結果的に新たに入った選手は活躍してくれた。
まずは、矢島が大きな仕事をやってのけてくれた。
大島がペナルティーエリア内まで切り込み、最後はそのクロスを受けた矢島が見事に決めてくれたのだ。矢島は得点感覚にも優れている感じはするし、ポテンシャルを感じさせてくれる。
もう一人の途中交代で入った鈴木武蔵も積極的にゴールを狙い、よかったと思う。
その後も日本は攻め続けるが、ゴールは奪えなかった。しかしながら、ほとんど危ないシーンもなく、結局1-0で日本は勝つことができた。
しかし、同じグループのもう一つの試合で2位コロンビアが勝ったため、決勝トーナメント進出はならなかった。
特に、日本は2戦目、3戦目がよく、十分に決勝トーナメント進出の可能性があっただけに、この結果は非常に残念だと思った。選手たちにとっても、完全に消化不良だろう。
今回、オーバーエイジの使い方など日本国中で議論になっており、メンバー選出は本当に難しいと思った。
U23日本代表の戦いは終わったが、この経験を糧に、この中から将来の日本代表を背負う選手が一人でも2人でも多く出てきてほしいと思う。
女子サッカー準々決勝 圧倒的に攻めたブラジル、PK戦で辛くも勝つことができた!
女子サッカーは男子サッカーに1日先駆けて、決勝トーナメントが始まり、12日に準々決勝4試合が行われた。グループリーグを1位通過したブラジルは、12日午後10時(日本時間13日午前10時)に、ベロオリゾンチのミネイラォン・スタジアムでオーストラリアと対戦した。
ミネイラォンといえば、2014年W杯で男子ブラジル代表がドイツに1-7で惨敗したスタジアムだ。
今大会、ブラジルでは、男子サッカーが最初の2試合であまりに不甲斐なかったので、国民は女子サッカーのほうに期待を寄せ始めていたようだった。
日本のなでしこジャパンが出場していないので、日本では、女子サッカーはほとんど注目されていないようだ。しかしながら、女子サッカーにとってオリンピックは最大の大会である。当然、見どころは多いはずだ。
グループリーグの試合は残念ながら見ていないが、決勝トーナメントは極力見ていきたいと思っている。
ブラジルのメンバーだが、ブラジル女子サッカー界のレジェンド、マルタがキャプテンとしてチームを引っ張っている。
マルタは、2011年に日本の澤が受賞したFIFAバロンドールをその前年まで2006年から5年連続で受賞しており、ブラジルでは大人気のスター選手である。
私は一度だけ、マルタのプレーを見たことがある。
2011年12月に、当時私が住んでいたサルヴァドールでネイマールが主催したチャリティーサッカーマッチがあり、その一員としてマルタもプレーしたのだ。
ポニーテールをなびかせながらピッチを疾走する姿は今でも目に焼きついている。
さて、試合は、そんなマルタを中心としたブラジルが、圧倒的な力を見せつけた。
マルタは意外とまだ若く、1986年生まれの30歳だ。一人でドリブル突破したり、華麗なパス交換など魅せてくれていた。まだまだ十分に見せ場をつくってくれていた。
ほとんどボールキープはブラジルだったが、ゴールだけが決まらない。
結局、0-0まま延長戦に入るがそれでも決まらず、PK戦に入った。
圧倒的な攻撃をしていたブラジルだったので、PK戦に入る前に決着をつけたかったが、ゴールだけが遠かった。
これだけ見ると、まるで男子サッカーブラジルのグループリーグ、1、2戦目のような感じだ。
延長戦に入る前に、マルタが円陣の中でチームメートたち全員に必死で鼓舞する姿には感動すら覚えた。
さて、そんなマルタの鼓舞も実らず、PK戦に入ったのだが、このPK戦が白熱してすさまじいものになった。
ブラジルが先攻。1人目から4人目まで両チーム全員が決めた。
そして、ブラジルの5人目は絶対的エースのマルタだ。だいたいエースと目される選手は5人目で蹴る場合が多い。
しかし、そんなマルタだったが、GKに止められてしまった。
概してPK戦ではビッグネームが外すことが多く、ここでもそうなってしまった。
これで、ブラジルは絶体絶命のピンチである。次のオーストラリアのキッカーに決められたら、そこで負けが決まる。
しかし、ブラジルのGKバルバラが見事に止めてくれたのだ。
その後、両チームとも息もつかせぬような展開だった。
両チームともキッカーが枠内にきれいに決めるのだ。本当にすごい精神力だと思う。緊迫した内容に、見ているこちらのほうが緊張するほどだった。
常々、ブラジル人はメンタルが弱いと思っていたが、この精神力、集中力は相当なものだと思った。
結局、8人目のオーストラリアのキッカーの枠内に飛んだ球をGKバルバラが見事に止め、ブラジルが準決勝進出を決めたのだった。
ブラジルが勝ってくれて本当によかったと思った。
そして、キャプテンのマルタは本当にホッとしたことだろう。
それにしても、このPK戦にはしびれた。両チーム全員が枠内にきっちりと蹴っていた。
最後には、リオ五輪のマークのタトゥーを入れていたブラジルのGKバルバラの執念勝ちといった感じか。
それにしても、やはりサッカーはゴールを決めてなんぼのゲームだ。
決定機にゴールを決めきれないことがここまで苦しんだ要因だ。
以前のブラジル女子には、クリスチアーニといういつも11番をつけたFWの選手がいて、マルタとのコンビネーションからよくゴールを決めていた。非常に勝気な感じで、けっこう好きな選手だった。今大会でも11番をつけてメンバーには選ばれているが、この日残念ながら出場機会はなかった。
さて、ブラジル女子の次の試合は、16日(火)午後1時(日本時間17日(水)深夜1時)からリオのマラカナンスタジアムで準決勝をスウェーデンと戦う。
スウェーデンはグループリーグでも対戦しており、そのときは5-1で勝っているが、油断は禁物である。
次の試合でも、ブラジルには素晴らしい戦いをみせてほしい。そして、決勝進出を決めてほしいと思う。