[スルガ銀行カップ2013]鹿島アントラーズ対サンパウロ 久々に見たガンソは思いがけず素晴らしい動きを見せてくれた!

先週の水曜日8月7日のことである。ブラジルの名門、サンパウロが日本に来て試合を行った。といっても、マンUのような興行ツアーではない。れっきとしたタイトルをかけた試合なのだ。

これはスルガ銀行カップといって、日本のナビスコカップの勝者と南米のカップ戦コッパ・スウアメリカーナの勝者が日本で試合を行うというものである。それにしても、どこからこのような対戦をする発想が出てきたのだろうか?まあ、始まった経緯はどうであれ、これは非常におもしろいカードだと思う。ナショナルチーム同士の試合は、親善試合を含めて多数あるが、クラブチームとなると極端に数が減る。そのため、非常に有効な機会となる。それも、一応はタイトルなので、それなりには真剣勝負をしてくれる。

TV観戦したのだが、非常に楽しめる内容だった。

この試合、BSフジで放送された。あまり見ないチャンネルだが、BSが見れるTVなら、契約とかしていなくても誰でも見れるようだ。それを試合当日の夜の11時30分から放送された。試合は既に終わっていたので、ネットなどで結果は確認でき、3-2で鹿島が勝ったことは既に知っていた。しかし、ブラジルのチームがどのような試合をしたのか興味深かったので、この試合を見ることをすごく楽しみにしていた。

コッパ・スウアメリカーナという大会について説明しておこう。

南米クラブチームのカップ戦で、日本語に訳すと、南米杯ということになる。南米クラブチームのカップ戦といえば、何といってもリベルタドーレス杯だが、この南米杯は、リベルタドーレス杯に次ぐ2番手の南米クラブチームのカップ戦ということになる。ちょうど、ヨーロッパでいうチャンピオンズリーグの2番手のヨーロッパリーグのような感じだ。

昨年のコッパ・スウアメリカーナは、リベルタドーレス杯の常連のサンパウロが実力通りに制していた。

現在、サンパウロは、セレソン級の有力メンバーを多数揃えているが、この試合には、セレソンで10番をつけることもあったジャジソン、2010年W杯では不動のエースストライカーとして先発出場していたルイス・ファビアーノ、そして今年から加入した元セレソンのキャプテンのCBルッシオなどは出ていなかった。若手主体で、知っている選手は、約20年不動の正GKのホジェリオ・セニと昨年、サントスとトラブルを起こして移籍したガンソの2人だけだった。

ガンソは、本当に久々に見る。昨年、私がブラジルを離れてすぐにサンパウロに移籍したせいもあり、サンパウロとしてプレーする姿を見るのは初めてだった。

ガンソが出ていると知って、これは楽しみだと思った。

ガンソといえば、一時期はネイマールに勝るとも劣らないほど、ブラジル国内で評価されていた選手だ。ネイマールと同じくサントスの下部組織で育っており、2010年のドリヴァウ・ジュニオールの新体制になり、ほぼときを同じくして先発選手に抜擢され、サントスの黄金期を支えた選手だ。しかし、それは過去のことだ。ネイマールが今でもサントスのアイドルであるのとは対照的に、ガンソはサントスとトラブルを起こし、よりによって最大のライバル、サンパウロに移籍したのだ。

ガンソのプレーも何度も見ていたが、プレーにむらがありすぎて、私は、上手いのかどうか疑問に思っていた時期もあった。

ガンソとネイマールは、サントス、そしてセレソンでも10番、11番を背負うものとして、2010年W杯終了直後ぐらいには、常にセットで捉えられていた部分があったが、徐々にネイマール一人がクローズアップされるようになり、ネイマールセレソンの絶対的なエースとして君臨するのとは対照的に、ガンソはセレソンからも呼ばれなくなっていた。

そんな最近話題にも上がらなくなったガンソだが、サントスの黄金期を支えてくれた選手として、今どうしているのかは、非常に興味があるところだった。

そんなガンソが、チームはサンパウロに変わったとはいえ、先発出場しているのだから、これは注目しないわけにはいかない。

今回の来日は、2011年12月のクラブW杯に出場したとき以来だろう。注目度としても、そのときとは比較にならないほど、ほとんど話題にすらなっていなかったことだろう。

特にJリーグでは鹿島ひいきというわけではないので、この試合、ガンソの動きだけに注目してTV観戦していた。

さて、そんな試合だが、開始早々は、ガンソはほとんどボールに触れる機会がなかった。これは、サンパウロではチームにマッチしていないのかなぁと思ったりもしたが、徐々にボールに触れるようになってきた。

前半、特に鹿島がよかったわけではないが、大迫の2ゴールで、鹿島が2-0とリードして折り返した。

後半は、サンパウロの動きがよくなった。前半が決して悪かったわけではないのだが、トップ下のガンソにボールがより集まるようになっていた。そんな中、ペナルティエリア少し外から打ったシュートがゴールマウスの中にきれいに入っていったのだ。あのガンソがゴールを決めたのだ。

ガンソもうれしそうだったが、私もうれしくなった。

その直後、鹿島にPKが与えられたが、大迫が外した。

これは、一度、大迫が蹴った球をGKホジェリオ・セニが止めたのだが、蹴る前にホジェリオ・セニが動いたのだろう、せっかく止めたのだがやり直しの判定になり、サンパウロの選手たちは猛抗議していた。この姿を見れば、サンパウロも本気だったことがわかる。

しかし、せっかくのチャンスをもらった大迫だったが、2度目のキックはバーの上に外してしまったのだ。

その後は、完全にサンパウロのペースだった。ますますガンソにボールが集まってきた。完全にチームの要だ。ガンソを中心にゲームが組み立てられている。

そんな中、ゴールライン近くまで攻め上がったガンソが絶妙なパスを出し、ゴールが決まったのだ。

これで2-2だ。サンパウロにいい流れになってきていた。このとき、アシストしたガンソだったが、パスを出した後、ゴールネットを支えるための棒にもろに顔面を激突させ、倒れこんでしまった。相当の衝撃に見え、一旦治療のためにピッチを去ったが、頭にぐるぐる巻きに巻かれ、再びピッチに戻ってきた。

その後も、完全にサンパウロペースだったが、終了間際のロスタイムに鹿島にゴールが決まってしまったのだ。柴崎の蹴った球がサンパウロのDFに当たり、球の角度が変わってしまい、GKホジェリオ・セニが飛んだ方向とは逆になり、ゴールマウスの中に入ってしまったのだ。

そしてその直後に試合終了。結局3-2で鹿島アントラーズが勝ち、このタイトルを獲得したのだった。

まあ、サンパウロには残念な結果だったが、十分な内容だった。見応えあるいい試合をしてくれたと思う。

同じく今年夏に来日してJリーグのチームと試合をしたヨーロッパの赤いチームとは大違いで、その戦いぶりには心躍らさせてくれた。

この日のガンソは1ゴール1アシストですべてのゴールに絡む活躍だった。随所にガンソらしいスルーパスを見ることができたし、TVを見ていて、思わずひとりで笑ってしまった。

今でもガンソ健在じゃん、と。

棒にぶつかって、頭をぐるぐる巻きにするのも、なんともガンソらしい。

GKのホジェリオ・セニがFKを蹴りに、自分の守るゴールの正反対に歩いて行ったときなどと同様に、何ともにやけてしまうシーンが多かった。ホジェリオ・セニはGKなのだが、100ゴール以上挙げており、直接フリーキックのキッカーを務める名物GKなのだ。ブラジルでは知らない人がいないほど有名な選手である。

さて、ガンソであるが、これですぐにセレソンに呼べ、とは思わない。ただ、かつて表舞台で輝いていた選手が、舞台は日蔭に移ったかもしれないが輝いている姿を見れて、とてもうれしく思ったのだった。

いい試合を見せてもらい、私は大満足したのだった。