【ロシアW杯】ブラジルは前大会の雪辱は果たせず8強で散る
ブラジル代表のW杯は終わった。
準々決勝でベルギー相手に勝つことができず、ロシアの地から去ることになった。
準々決勝のブラジル対ベルギー戦が、7月7日(金)21:00(日本時間8日(土)早朝3:00)から行われた。
私は、この日、仕事の関係で、秋田県内にいた。
ホテルにチェックインし、TVをつけてみたのだが、この日試合中継をするTBSのチャンネルが見当たらない。なんと、TBS系は放映されていないエリアだったのだ。
これはある意味、相当な衝撃だった。
W杯の生中継はいろいろなTV局に割り振られているが、なんでこの大事な試合がこのTV局で中継されることになっているのか、他のどこのTV局でも見れたのに、この偶然性を恨みたい気持ちになった。
日本が勝ち進んでいたら、秋田県の人は、日本代表の準々決勝の試合が見れなかったことになる。恐ろしい現実を知ってしまった。
しかし、今は便利な時代になったものだ。ネット配信という方法がある。
そこでネット配信の方法を探したのだが少し手間取り、試合開始から観ることができなかった。
スマホを操作し、何とか観れるようにできたと思ったら、ちょうどブラジルが失点したところだった。ベルギーのCKから、この日出場停止のカゼミーロ(レアルマドリッド)に代わりスタメン起用されたフェルナンジーニョ(マンチェスターシティ)のオウンゴールのシーンが何度も映し出されていた。
前半13分、私はブラジルがリードを奪われた瞬間から、スマホの小さな画面でこの試合を観戦することになった。
そんな嫌な展開に拍車がかかった。
前半31分、ブラジルのCKのチャンスから一転、ベルギー得意の超高速カウンターがはまった。ルカク(マンチェスターユナイテッド)が持ち上がり、ボールを受けたデブライネ(マンチェスターシティ)が右45度の角度から鮮やかな超高速ミドルシュートを決めたのだ。
あっという間にブラジルは2点のビハインドを背負うことになった。
今のブラジル代表は守備の堅さが売りなので、ゴールを奪われることはほとんどない。
チチが監督になってから、2点以上取られたことはないようだ。
しかし、この大事な試合で、いきなり2失点してしまったのだ。
メンタルの弱いブラジルがどう建て直してくるか。監督チチの腕の見せ所だ。
後半開始から、ウィリアン(チェルシー)に代えフィルミーノ(リバプール)を投入した。
ブラジルは1点取れれば落ち着きを取り戻し、状況は打開できると思った。
しかし、怒涛の攻撃を仕掛けるものの、どうしてもゴールが奪えない。
オランダは完全にカウンター狙いだが、そのカウンターは切れ味が物凄く鋭い。
ルカクとミランダ(インテル)のマッチアップは相当に見ごたえがあった。ミランダもまったく引けを取らず、頑張って抑えていた。
ブラジルは、後半13分、ガブリエウ・ジェズースに代えて、ドゥグラス・コスタを投入した。
ジェズースを代えるのは早いと思ったが、ドゥグラス・コスタは切れ味鋭いドリブル突破を何度も見せてくれた。
しかし、ブラジルはゴールを決めることができず、時間だけが刻々と過ぎていく。
後半27分には、パウリーニョ(バルセロナ)に代えてへナト・アウグスト(北京国安)を投入した。
この交代もどうかと思ったが、その直後の後半31分、コウチーニョ(バルセロナ)からボールをつなぎ、へナト・アウグストがヘッドでゴールを決めたのだ。
へナト・アウグストは本当にいい位置にいてくれて、よく決めてくれた。
チチの采配も当たり、ブラジルは攻撃が仕掛けられているので、追いつく可能性は十分感じられた。
今大会は、後半アディショナルタイムに決まるシーンも多いので、劇的な結末も十分にありえると思った。
しかし、そんな思いもむなしく、試合はそのまま終わった。
両チームの選手たちは健闘を称えあっていた。ネイマールもベルギー選手を称えていた。
ブラジルはベスト8で散った。
チチ率いるブラジル代表は、4年前の雪辱を果たせず、ロシアの地を去ることになった。
まあ、仕方ないだろう。サッカーなんてこんなものだ。
私の心も不思議と落ち着いていた。
サッカーには、運・不運というか、試合の流れというものが必ずある。どんなに強いチームでもそれを着実に捉えられないと勝てない。
これは、サッカー以外にも多くのスポーツで同じことが言えるだろう。
今大会、前大会の雪辱を晴らすべく、チチ監督のもと、ブラジル代表選手たちは一体となり、最高の状態で大会に臨むことができた。その新たな戦いぶりに、優勝候補の筆頭にも挙げられ、世界中が注目した。
しかし、大惨敗を喫した前大会のベスト4にも達することができなかった。
2002年日韓大会で優勝して以来、2006年以降は、前回のブラジル大会を除き、すべてベスト8で敗退している。
ブラジル国民の期待を背負ったチチ率いるブラジルを持ってしても勝ち上がることはできなかった。
W杯で優勝しないと神格化されることはない。
ペレやマラドーナはそうであるが、メッシやネイマールはそうではない。いや、現時点ではそうではない。
セレソンの象徴ネイマール、そしてブラジル代表の戦いはまだまだ続くことになる。
これからさらに4年間戦い続けなければならない。4年後に結果を出すために。
今回ベスト4に入ったビッグネームは、フランスだけだ。
今大会では、新たな優勝国が現れる可能性は十分にある。
それはそれで楽しみなことではある。
しかし、それと同時に、非常に残念なことではあるが、ヨーロッパの国しか残っていない、という現実がある。
世界のサッカーは完全に転換期を迎えているのではないだろうか。
世界のサッカーは群雄割拠の時代に入ったように思う。
そんな中、ブラジル代表はどう進んでいくのだろうか。
ブラジル代表の新たな戦いが始まることになる。
【ロシアW杯】ブラジルの対戦相手になりかけた日本。感動をありがとう!西野ジャパンの素晴らしい戦いを終えて・・・
ここまで凄い試合になるとは夢にも思わなかった。
ブラジルがベスト8進出を決めた約2時間後に、その試合は始まった。
この日、私は、急いで仕事から帰り、いくつかの所用を済ませ、一目散に睡眠をとることにした。
眠りは浅かったのだろう。いくつかの夢を見つつ、目覚まし時計に頼ることなく、夜9時50分ごろに目が覚めた。
ブラジルの試合のキックオフが夜11時だったので、その30分前ぐらいに起きれば十分だと思っていたが、予想外に早く起きることになった。
ブラジル戦のTV中継はNHKでやるので、NHKをつけた。試合の直前の10時から日本代表についての特別番組をやっていた。
その番組を見ながらぼんやり過ごしていたが、ブラジル戦が始まる前に夕食を済ませておこうと思い、前日に作ったカレーに火を通した。
そんなことをして過ごしていたら、いつの間にか、ブラジル対メキシコ戦のキックオフの時間になった。
サッカーのTV観戦では、ビールを飲みながら、というのが定番のスタイルだが、このときは、寝起き間もなかったこともあり、カレーライスを食べた直後ということもあり、食後のコーヒーを飲みながらになった。
一発勝負の決勝トーナメントは何が起こるかわからない。結果が実力どおりになるとも限らない。観るほうも真剣になればなるほど、相当な緊張感を持つことになる。
ブラジルは、それほど苦しまずに無事に勝つことができた。
ブラジルの勝利の後、日本戦のキックオフまで2時間あった。
今大会は、ジャイアントキリングや番狂わせも多く、サッカー好きの人もそうでない人も十分に楽しめる大会になっている。
見ごたえある試合が多いので、一つでも多くの試合を観たいと思う。
深夜の時間帯に行われる日本では、どのように観戦時間を作り出すか頭を使うところである。
会社の同僚には、毎日早朝に起き、2つのゲームが同時にキックオフされるグループリーグの最終節では2つのTVを並行してサッカー観戦を楽しんでいた。
いろいろな楽しみ方があると思う。
私はTVを一つしか持っていないので、そこまではできないが、数日間は夜中に行われる2つの試合のインターバルに2時間ほどの睡眠をとったりしながら、W杯観戦を楽しんでいた。
しかし、この日は目が冴えて、まったく眠気を感じなかったので、起きていることにした。
記憶が定かのうちにということで、終わったばかりのブラジルの試合について文章を書いたりしていた。しかしながら、書き終わる前に日本戦のTV中継が始まったので、パソコンを打つ手を止め、TVに集中することにした。
ブラジル代表もそうだが、日本代表の試合も楽しませてもらっている。
もしかしたら、というか、半分以上の確率で、そんな楽しみもこの試合で最後になるかもしれないと思うと、少しでも楽しみたいと思う気持ちが強かった。
ブラジルモードから日本モードへの切り替えだ。
BGMもブラジル音楽(夜中ということで静かなルイス・ボンファをかけていた)だったが、TVをつけることによってそれも止め、先日購入したばかりの日本代表の乾のユニフォームを身に着けた。
先ほどは、飲む気にもならなかったビールとつまみも用意したら、否が応にも気分は盛り上がる。ビールは、もちろん日本代表をサポートし続けるキリンだ。
そんなことをしていたら、いつの間にかキックオフの3時は目の前に迫っていた。
なぜか、先ほどのブラジル戦とは違い、TVの前でずっと立ち続けながら観ていた。ビールグラスを片手に、また時折りつまみをほお張りながら。
日本人であるわれわれにとっては、これ以上ないぐらい大事な試合だが、世界中でみれば、決勝トーナメントでもっともつまらない試合と思われているだろう。ヨーロッパの一流クラブのエースを多数揃えた世界ランキング3位の超強豪チームと、グループリーグをやっとのことで突破してきた世界ランキング61位のアジアの弱小チーム。
贔屓目なしでも、誰もがそう思うだろう。
とにかく0-0で前半を折り返してほしい。
その願いが通じたのか、ベルギーの猛攻を受けながらも、その通りになった。
ベルギーに押し込まれていたとはいえ、日本にもカウンターからの得意な形からいくつか決定的なチャンスを作れており、希望を持てる内容だった。
後半はまさにドラマチックだった。
いきなり開始3分、試合は動いた。
なんと、日本にゴールが決まったのだ。
自陣内で乾から受けたボールを柴崎が絶妙なタイミングで前線へスルーパスを出した。これが針の穴を通すようにきれいに相手DFの脇を通り抜け、右サイドを走り込んだ原口が落ち着いて蹴ったシュートは、ゴール左サイドネットにきれいに入ってくれた。
「よっしゃ!」
夜中だったが、TVの前で大声を上げてしまった。
原口がやってくれた。よくこの状況で落ち着いて決めてくれた。
毎試合、人一倍ピッチを駆け巡り、献身的に攻守に貢献していた原口が決めてくれたのだ。
そして柴崎。この人は本当に凄い。これ以上ないタイミング、コース、スピードで敵陣を切り裂くスルーパス。
感動すら覚えるプレーぶりだった。
しかし、1点ぐらいでは、まったく安心していられない。
そんな思いの中、そのほんの数分後に、今度は乾が魅せてくれたのだ。
相手DFのクリアを拾った香川からマイナスに入ったボールを乾が目の覚めるようなミドルシュートを決めてくれたのだ。
またもTVの前で大声を出し、手を叩いて喜んでしまった。
香川と乾の関係性については、W杯直前のパラグアイ戦で何度も見せてくれ、西野ジャパン最大の武器になることになった。
乾は、以前から大好きな選手で、なかなかレギュラーに定着できなかったハリルホジッチ時代から、いつもなぜ使ってくれないのかと思っていた。
香川については、4年前のブラジル大会でのパフォーマンスがあまりに悪く、ブラジルの地でそのプレーを目の当たりにして以来、あまり好きではなかったが、先のパラグアイ戦での乾との連動性、また死に物狂いでピッチ上を走り回る姿を見て、改めて頑張ってほしいと思った。そのとき、今の日本代表には乾と香川はなくてはならない選手だと強く思ったものだ。
なんと、後半10分にも満たない時間に、日本が2-0とリードした。
ベルギーの焦りは明らかだった。
正直、2点差になり、もしかしてベスト8に進出できるかも、ブラジルとの夢のような対戦が実現するかも、といった思いが頭の中を巡らしたりしていた。
しかし、相手は、超強豪国ベルギーである。ベルギー史上最強といわれている超タレント集団だ。
とにかくゴールを奪われないでほしいと願いながら観ていた。
何度も危ないシーンはあったが、GK、DFを中心に何とか守りきっていた。
しかし、後半24分、ベルギーにゴールを奪われてしまう。ループシュートがGK川島の手の届かないところに吸い込まれるように入っていった。
そして、その5分後にもゴールを決められ、同点になってしまった。
2点差あったリードが、あっという間に消え去った。
これがW杯だ。
これが決勝トーナメントだ。
これがベルギーだ。
悔しいけれど、そんな思いが巡らされた。
しかし、まだ残り15分ある。さらに延長戦に入ることも可能なのだ。
ベルギーの怒涛の攻撃に、日本選手たちは耐え続けた。
日本も頑張って攻め続けた。しかしゴールを奪えない。
そんな中、後半アディショナルタイム、日本はFKのチャンスを得た。
キッカーは本田だ。本田ならやってくれるだろう、そんな思いもむなしく、惜しくも相手GKに弾き出された。
続いてCKだ。しかし、GKにキャッチされてしまった。
その次の瞬間、思い出したくもない光景が待っていることになる。
ボールをキャッチした相手GKから始まった超高速カウンターに、前がかりになった日本選手たちは戻れず、最後の最後でベルギーに仕留められてしまったのだ。
後半アディショナルタイム4分のことだった。
試合は終わった。
2-3。
ベルギー相手によく頑張ったと思う。
過去2回のベスト16とは明らかに違った。
選手たちのプレーに、心打たれた。
しかし、ベスト8進出はならなかった。準々決勝でブラジルと対戦する夢は砕かれてしまった。
これが現実である。
今大会、後半アディショナルタイムの最後の最後に決まる試合があまりにも多いが、日本もその餌食になってしまったことは残念でならない。
もう少しで延長戦に入るところだった。
少しでも長く、この日本代表の戦いを見ていたかった。
あまりの劇的さに唖然としてしまった。
本当に残念に思った。
しかし、それと同時にまったく怒りのような感情は出てこなかった。
本当によくやってくれたと思う。
西野監督をはじめ、日本代表の選手たちは、本当に頑張った。選手たちのピッチ上での戦いぶりには、感動すら覚えた。
この戦いぶりに、怒る日本人は誰もいないだろう。
過去のW杯のいろいろな試合が、その観戦状況とともに、鮮明に記憶されているが、間違いなくこの試合を一生忘れることはないだろう。
やはりW杯は特別なものであると再認識させられる。
4年に一度のW杯ではあるが、出場できない国のほうが圧倒的に多い。
サッカーが盛んなヨーロッパの強豪国も、今大会のイタリア、オランダのように、毎大会、必ずといっていいほど出場できない国が現れる。
それに比べて、日本は、1998年から6大会連続で出場し、今大会では、決勝トーナメントにまで進出してくれた。
ここまで、日本国中に希望を与え、楽しませてくれたのだ。
3ヶ月前、ハリルホジッチが解任され、西野に監督が代わったとき、日本国中で賛否両論あった。いや、否のほうが圧倒的に多かったように感じた。
しかし、私は、よくぞこのタイミングで日本サッカー協会は英断してくれた、と思った。
指揮官に一貫性がなく、個々の選手たちから信頼関係を得られなければ、戦う集団にはなりえない。監督と選手たちの意識のずれが発生すると、選手同士に迷いが生じ、思い切って戦えなくなる。
だから、それを解消すべく、ギリギリのタイミングで苦渋の決断を行った日本サッカー協会には、エールを送りたいと思った。
しかし、西野ジャパンは就任後2戦ではまったくいいところなく惨敗。
勝利を得られたのは、W杯直前の最後の試合だった。しかし、ここで初めて試した布陣がおもしろいようにはまった。
W杯に入り、監督の采配ははまった。はまり続けた。
周りからのいろいろな意見はあるが、すべては信念を持って決断した西野監督自身の采配によるものだ。
そして、監督を信じ、選手たちは一心不乱にプレーした。
出場機会を得られず悔しい思いをした選手も当然いるはずだ。しかし、レギュラーもサブも一つになった。
そして、グループリーグを突破し、最後は、ベルギー相手に素晴らしい戦いを見せてくれた。
日本代表の選手、監督、コーチ、関係者たちへ、本当にありがとうと言いたい。
皆さんと一緒に、素晴らしいときを過ごさせてもらいました。
まずは、ゆっくり休んでください。
そして、この経験を糧に、さらに強い日本代表を見せてください。
頑張れニッポン!
【ロシアW杯】決勝トーナメント1回戦、ブラジルは順当にベスト8進出!次戦の相手は、日本相手に劇的勝利のベルギーに決まった!
ブラジルの決勝トーナメント初戦が、7月2日(月)18:00(日本時間23:00)にロシア南部の都市サマーラで、メキシコを相手に行われた。
ロシアというと夏でも涼しいイメージがあるが、今年の夏は通常よりかなり暑いようで、先日の日本対ポーランド戦が行われたボルゴグラードもそうだったが、この日のサマーラも30℃を超えているようだ。
決勝トーナメントが始まり、決勝トーナメント1回戦8試合の半分が既に終わっているが、有力チームが続々と敗退している。
ここ数年、バロンドールを2人で独占し続けているクリスチアーノ・ロナウドとメッシだが、今大会期待されながらも、いずれも一昨日の試合で敗退している。
また、2010年南アフリカ大会の覇者であるスペインも、開催国ロシア相手にPK戦の末敗退している。
そんな有力国が続々と敗退する中、ブラジルはベスト8への進出を決めることができた。
ブラジルのチーム関係者はホッとしていることだろう。
ブラジル対メキシコといえば、最近では、フル代表ではないが、2012年のロンドン五輪決勝を真っ先に思い出す。ネイマール擁するブラジルは初優勝を期待されたが1-2で敗れている。
しかし、ブラジルは、実績・実力ともにメキシコをはるかに上回っており、今大会では優勝候補の筆頭にも挙げられている。ドイツ、スペイン、アルゼンチン、ポルトガルといった有力国が消え行く中、負けるわけにはいかない。そんな思いがブラジル人選手たちの共通認識だっただろう。
この試合、輪番制のキャプテンには、第2戦のコスタリカ戦に続き、DFチアゴ・シウヴァ(パリSG)が務めた。
ブラジルの先発は、左SBが前試合の途中で退いたマルセロ(レアルマドリッド)ではなくフィリペ・ルイス(アトレチコマドリッド)だったが、予想通りのものだった。
前試合で途中退場し心配されたマルセロだったが、ベンチには入っていた。また、初戦に出場して以来怪我で戦列を離れていた右SBダニーロ(マンチェスターシティ)も、久々にベンチに戻ってきた。
前半は完全にメキシコのペースになった。
カウンター中心に攻めてくると思われたメキシコだったが、この日は最初から積極的に攻撃を仕掛けていた。ブラジルは、思うようにボールキープができずまったくペースを掴めないでいた。
客席からは、メキシコサポーターからの声援がとても目立っていた。ブラジル選手がボールを持つと大ブーイング。メキシコのボール回しには「オーレ!」との大声援を送っていた。
ブラジルサポーターもかなりの数いるようだったが、メキシコサポーターの声援は一体感がありスタジアム中に響き渡っていた。
何せブラジル人はメンタルが弱いので、このブラジルにとってネガティブな声援で、ブラジル人選手たちが正気を保てなくなるのではないかと心配した。
ブラジルサポーターもこれには危機感を持ったのだろう。俺たちも頑張って応援しないという感じで、徐々に大きな声援が送られるようになってきた。
まったくリズムを作れなかったブラジルだったが、徐々にペースを握れるようになってきた。いくつか決定的なチャンスも作れるようになっていた。
前半は0-0で折り返した。
この日のメキシコはかなり積極的に動いてきた。
後半早々から、W杯5度目の出場のメキシコのレジェンド、ラファエル・マルケス(アトラス)に代え、ラユン(セビージャ)を投入した。
後半は、早々にゲームが動いた。
後半開始から攻撃を仕掛けていたブラジルにゴールが決まったのだ。
ボールを持ったネイマール(パリSG)が左サイドから中央へカットインし、ウィリアン(チェルシー)へボールをつなぎ、再び走り込んできたネイマールがゴールを決めたのだ。
後半6分、ブラジルに大きな1点が入った。
先取点を取れたブラジルは、だいぶ楽に試合を進められるようになった。
前半よい攻撃ができていたメキシコの勢いは、後半にはほとんど感じられず、終始ブラジルのペースでゲームを進めることができた。
後半43分には、ブラジルの高速カウンターが実を結んだ。
相手からボールを奪った途中出場のフェルナンジーニョ(マンチェスターシティ)から左サイドのネイマールに縦パスを入れ、中に切れ込んだネイマールからのパスをコウチーニョ(リバプール)に代わって入ったフィルミーノ(リバプール)が合わせるだけのダメ押しのゴールを決めたのだ。
これには、監督のチチも喜びの輪に加わっていた。
2-0でブラジルが勝ち、ベスト8進出を決めた。
次戦、ブラジルの準々決勝の相手は、日本対ベルギーの勝者になる。
残念ながら、日本はベルギーに2-3で破れ、ブラジルの対戦相手になることはできなかった。
しかし、日本は格上のベルギー相手に一時は2-0とリードを奪うなど、予想外の善戦で、日本中に感動を与えてくれた。
ブラジルにとって、ベスト8進出は、1994年のアメリカ大会で優勝して以来7大会連続となる。
勝負はこれからだ。
次の相手、ベルギーは、本日の戦いでは日本相手に苦戦したが、実力者を前線にそろえ、ベルギー代表史上最高といわれている。簡単に倒せる相手ではないが、今のブラジルなら、十分に戦えるだろう。
そんなブラジル対ベルギーの準々決勝の試合は、7月6日(金)21:00(日本時間7日(土)早朝3:00)に、日本代表のキャンプ地でもあるカザンで行われ、TBS系で生中継される予定である。
日本が相手でないのが残念でならないが、素晴らしい戦いを期待したい。
【ロシアW杯】 ブラジルはグループリーグ1位で決勝トーナメント進出を決めた!
ロシアW杯も開幕から2週間近くが過ぎ、続々と決勝トーナメント進出国が決まっている。
グループリーグ最終節は、今週月曜(25日)から木曜(28日)まで、2グループずつ4日に渡り試合が行われている。
首の皮一枚で踏みとどまっていたアルゼンチンは最終節での劇的勝利で決勝トーナメント進出を決めたが、前回王者で世界ランキング1位のドイツは、韓国相手の最終節で0-2と破れ、グループリーグ最下位で決勝トーナメント進出を逃している。これで、前回の優勝チームは、3大会連続で決勝トーナメント進出を逃していることになる。
ブラジルのグループリーグ最終戦は、27日21:00(日本時間28日早朝3:00)にモスクワのスパルタクススタジアムでセルビア相手に行われた。
ドイツのグループリーグ敗退の衝撃からほんの2時間後のことだった。
ドイツが負けたからってブラジルは付き合うわけにはいかない。
そんな思いを胸に、この日キャプテンを任されたCB(センターバック)ミランダ(インテル)を先頭にブラジルの選手たちはピッチに登場した。ブラジルの先発は、前試合とまったく同じだった。
セルビア、ブラジルの順で国歌斉唱がされた。
セルビアの国歌斉唱では、セルビア人選手、またセルビア人サポーターに涙を流している姿があった。
対照的に、ブラジルの国歌斉唱では、4年前のブラジル大会のときのように、演奏が終わった後も、ブラジル人サポーターが国歌を最後まで歌い続け、ブラジル人選手たちも呼応していた。感動的なシーンだ。
客席には、ブラジルのサポーターがとても多く集まっていた。
試合が始まった。
セルビア選手たちは体が大きく屈強でとてもコンパクトに戦っていた。グループリーグ突破のためには勝つしかないセルビアは、最初から積極的に攻め込んでいた。
対する、引き分けでも突破できるブラジルは、守備の意識が高く、慎重に戦っている印象を受けた。
そんな中、開始10分、左SB(サイドバック)マルセロ(レアルマドリッド)にアクシデントが発生した。
ボールを持ったマルセロが自らボールをピッチの外に出した。最初何が起こったのかよくわからなかったが、脳震盪でも起こしたのだろうか、自力でまともに歩けない様子だった。やむを得ず、フィリペ・ルイス(アトレチコマドリッド)に交代した。
マルセロは不動の左SBだが、フィリペ・ルイスも遜色なくプレーできていた。
ブラジルは、ボールを支配するが、なかなか突破口を開けない状態が続いていた。
そんな中、前半36分、コウチーニョ(バルセロナ)の好判断からのダイレクトパスに、パウリーニョ(バルセロナ)が絶妙の飛び出しからワンタッチで相手GKの頭上を越すループシュートでゴールを決めた。
このゴールでブラジルはだいぶ楽に試合を運べるようになった。
そのまま、前半は、1-0で折り返した。
後半に入りしばらく経つと、セルビアに押し込まれる場面が続いた。ブラジルは中盤でルーズボールを奪うことができず、ボールがキープできなくなったのだ。
これは危ないな、と思いながら見ていたが、何とかしのぎ続けていた。
そんな中、後半23分、ネイマールのCKから、チアゴ・シウヴァ(パリSG)がヘッドで決めて貴重な追加点を奪うことができた。
ブラジルは、パウリーニョからフェルナンジーニョ(マンチェスターシティ)、コウチーニョからへナト・アウグスト(北京国安)へと交代し、守備を固めた。
特に、中盤のカゼミーロ(レアルマドリッド)の隣にポジションを取ったフェルナンジーニョは、守備のバランスを整えていた。
そのまま2-0でブラジルが勝ち、グループリーグ1位となり、決勝トーナメント進出を決めることができた。
ネイマールも前2試合とは違い、体のキレが感じられ、終盤には何度か決定的なチャンスがあった。
今のネイマールは、守備もきちんとし、自分本位ではなく、味方選手も十分に使うようプレーしている。4年前の大会で指摘されていたネイマール依存症は完全に脱却できていると思った。
コウチーニョを筆頭に、ガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)、ウィリアン(チェルシー)、パウリーニョといった攻撃陣がネイマールに勝るとも劣らない動きを見せている。
最前線のガブリエウ・ジェズースはゴールこそ決めていないが、最前線での相手選手への猛烈なチェイシング、そして守備でもバックラインまで走り回り、献身的にプレーしており、非常に貢献度の高い選手だ。
ブラジル選手のコンディションは上がってきているように見える。
グループリーグも残すところ、日本の属するグループHとイングランド、ベルギーが進出を決めているグループGだけとなった。
決勝トーナメントについては、その2組4カ国を除く12カ国の組み合わせが決まっている。
日本が決勝トーナメントに進出するか、その場合、組み合わせのどこに入るか、とても気になるところだ。
次のブラジルの試合は、7月2日(月)18:00(日本時間23:00)ロシア南部サマーラでメキシコを相手に行われ、NHK総合で生中継される予定である。
決勝トーナメントはノックアウト方式の一発勝負なので、どの試合も手を抜けない。
簡単に勝てる試合はないだろうが、素晴らしい戦いを見続けていきたいと思う。
【ロシアW杯】グループリーグ2戦目ブラジル対コスタリカ ブラジルは苦しみながらも劇的な勝利を収めることができた!
ロシアW杯が開幕し1週間が経つ。
日本国内では、戦前の盛り上がりが今ひとつだったが、日本が初戦で格上のコロンビアに勝ち、巷でも徐々にワールドカップモードに入っているように感じる。
ここまで、各組でグループリーグの1~2戦が行われているが、強豪国の苦戦が目立つ。
前回優勝のドイツはメキシコ相手に初戦を落としているし、世界最高プレーヤーのメッシ擁するアルゼンチンはグループリーグ最終戦を残してグループ最下位の崖っぷちである。
反対に苦戦が予想された、出場国中FIFAランキング最下位の開催国ロシアは、開幕2連勝で決勝トーナメント進出を最初に決めるなど、予想外の展開が続いている。
優勝候補の筆頭に挙げられるブラジルも、初戦を格下のスイス相手に引き分けており、状況は芳しくない。
そんな中、グループリーグの2戦目、ブラジル対コスタリカの試合が、6月22日(金)15:00(日本時間21:00)にサンクトペテルブルクで行われた。
今回のW杯では、グループリーグ全3試合中最初の2戦の試合開始時刻は、日本時間で午後9時、午前0時、午前3時の3パターンである。
今回の試合は午後9時開始ということで、日本ではゴールデンタイムの時間となった。反対に、ブラジルでは、金曜の午前9時キックオフだったが、この日ブラジル国内では祝日になったようだ。
ここ最近、仕事上の会食等が多く、家にいるときは、ほとんどアルコールを飲まないようにしていたが、この日は、仕事も早く終えることができ、景気づけに、久しぶりに自宅近くの馴染みの居酒屋へ行き、店主と話をしながら、おいしいつまみとビールで腹ごしらえを済ませ、自宅のTVで観戦した。
ブラジルの先発は、前試合から右SB(サイドバック)のダニーロ(マンチェスターシティ)がファグネル(コリンチャンス)に変わったのみでそれ以外は第1戦と同じだった。個人的に応援しているダニーロだが、前日の練習中での怪我が原因のようだ。重くなければよいと思うがどうだろうか。
輪番制のキャプテンは、CB(センターバック)のチアゴ・シウヴァ(パリSG)が務めた。
入場セレモニーが終わり、キックオフのためにピッチ上に出て行ったブラジル選手たちは、青色のセカンドユニフォームを纏っていた。
ブラジルのセカンドユニフォームの青色は、そのバージョンによって微妙に色合いが異なる。私は、2011年のターコイズブルーのバージョンが、その色合いといいデザインといい大好きだったのだが、その年に行われたコパアメリカの成績が悪く、縁起が悪いということですぐに次のバージョンに切り替えられてしまった。
今回の青色は、2011年バージョンほどではないが、私の好きな少し緑がかったきれいな青い色だと思った。そんなきれいな色のユニフォームで戦うので、ぜひ今日は勝ってほしいと思った。
早速私も、自分で持っている2011年の青色のユニフォームを身につけ、TV観戦することにした。
さて、これから始まる試合は、壮絶な一本の大河ドラマのような展開を繰り広げることになる。
この時点では、そんな試合展開になるなど、誰が予想しただろうか。
コスタリカは、4年前のブラジル大会でベスト8に入り、一大旋風を巻き起こしたチームだ。大活躍したGKナバスはブラジル大会後、世界一のクラブチーム、レアルマドリッドに加入した。見事正GKの座を掴み、UEFAチャンピオンズリーグ3連覇の立役者として活躍している。
試合は、開始早々は、ブラジルがそこそこ攻撃を仕掛けていたが、コスタリカの守備を崩しあぐねていた。
コスタリカは、5-4-1の超守備型ファーメーションできれいに並んでいる。
ブラジルは、このきれいな並びをなかなか攻略できず、苦し紛れの遠目からのシュートを繰り返すことになった。
前半は0-0で折り返した。
後半開始から、ブラジルは、右WGのウィリアン(チェルシー)に代えて、ドウグラス・コスタ(ユベントス)を投入した。
後半は、開始早々からブラジルが攻撃を仕掛けられるようになり、怒涛の攻めを見せる。
しかし数多く放つシュートはことごとくGKナバスに抑えられる。さすが、世界一のクラブチームの守護神だ。
前半よりは明らかによい攻撃ができているが、ゴールだけはこじ開けることができず、時間だけが刻々と過ぎていく。
ネイマール(パリSG)も時折りシュートを放つが、普通ならいとも簡単に決めるものの、この日はまったく決めることができていなかった。ボールキープができない場面もあったりし、前試合同様、体のキレは感じられなかった。
そんな中、後半33分、PA(ペナルティエリア)内でネイマールが倒され、ブラジルにPK
が与えられたのだ。いや正確にいうと、PKが与えられかけたのだ。
主審はPKの判定を下したが、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)の判断を仰ぐことになった。
その結果、PKは取り消しになってしまったのだ。
意気揚々とボールを抱えてPKスポットに向かっていたネイマールだったが、PKを蹴ることは許されなかった。
VARがない前大会までだったら間違いなくPKだったはずだ。
改めてVARの底力を見せ付けられた。
あと試合は10分少々。
ブラジル選手たちの焦りは増すばかりだ。
シュートまでは持ち込めるのだが、守護神ナバスの壁を崩すことがどうしてもできない。
そんな中、イライラのピークに達していたネイマールが、ボールを地面に思いっきり投げつけイエローカードを受けてしまう。それに対し、主審に抗議したと受け取られたコウチーニョ(バルセロナ)までイエローカードを受けてしまった。
ネイマールはまだしも、コウチーニョのイエローカードは痛いと思った。
今のブラジルでは、コウチーニョのプレーがずば抜けており、出場停止などにつながらなければよいと思った。
しかし、その後もコウチーニョは、冷静さを失わず、素晴らしい動きを見せ続けてくれた。
いよいよアディショナルタイムに入る。
アディショナルタイムは6分と掲示された。
サッカーの試合で6分のアディショナルタイムはなかなか見たことがない。
なんとかしてくれ、と祈るような気持ちで見ていたそのとき、歓喜の瞬間が訪れた。
ブラジルにゴールが決まったのだ。
コウチーニョが決めてくれたのだ。
やっと守護神ナバスの壁を崩すことができたのだ。
私もTVの前で、興奮のあまり大声で叫んでしまった。
このゴールは、ゴールを決めたコウチーニョから始まっている。
中盤でパスを受けたコウチーニョから左サイドのマルセロ(レアルマドリッド)に渡り、ゴール前に入れたクロスを途中出場のフィルミーノ(リバプール)がヘッドで折り返し、ガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)が足で落としたところに猛然とコウチーニョが走りこみ見事にゴールを決めてくれたのだ。
これには、私だけでなくブラジル中が歓喜したことだろう。
ピッチ上の選手たちもこれ以上ないぐらいに喜んで歓喜の輪をつくっており、監督のチチも喜びすぎて転んでしまっていた。
試合はあと残り4分ほどだ。
ブラジルはこの虎の子の1点を守り抜くために終始ボールをキープし続けた。
アディショナルタイムも6分を過ぎ、いつ笛が鳴るかというときに、カゼミーロ(レアルマドリッド)からのパスをドウグラス・コスタがゴール前に流し、ネイマールがゴールを決めたのだ。
後半アディショナルタイムでの2ゴールで、ブラジルは苦しみながらも2-0で勝つことができたのだった。
試合が終わった瞬間、ネイマールはピッチ上でうずくまり泣いていた。
相当なプレッシャーだったのだろう。勝てて本当にホッとしたと思う。
このネイマールの行為には賛否両論あると思う。
ネイマールの気持ちは痛いほどわかるが、私は、できればこのような姿は見せてほしくなかった。優勝した後ならともかく、優勝を狙っているブラジルにとっては、これから何試合も戦わなければならないのだ。毎回こんな姿を見せることになるのだろうか。
コンディションが今ひとつに感じたネイマールだが、このゴールをきっかけに変わってくれたらと思う。
ともあれ、ブラジルは勝つことができ、グループリーグ2戦を終え、グループトップに躍り出ることができた。
この結果にブラジル関係者はホッとしていることだろう。勝ちと引き分けとでは天地の差だ。アルゼンチンと同じ境遇になりかねない状況だった。
私自身も、久々に試合を見て興奮した。
この試合を見て一番感じたことは、コウチーニョのプレーの素晴らしさだ。
ポジショニングが抜群なのだろう。攻守のいたるところに顔を出し、すごい勢いで走っている。ほとんどすべてのチャンスのシーンにおいて、攻撃の基点となっている。
非常に安定感があり、安心して見ていられる。本当に惚れ惚れするほどのプレーぶりだ。
次はグループリーグ最終戦になる。最終戦は各組の2試合が同時刻のキックオフとなる。
次のブラジルの試合は、6月27日(水)21:00(日本時間28日(木)早朝3:00)にセルビアとモスクワ スパルタクススタジアムで行われる。NHK総合で生中継される予定である。
ブラジルは、引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる。
決勝トーナメントを見据え、若干メンバーを変えるような気もする。
どのようなメンバーで臨むかも興味深いが、きっちりと勝って、気持ちよく決勝トーナメントへ進んでほしい。
【ロシアW杯】ブラジル初戦はドロー!スイスと勝ち点1ずつを分ける
ロシアW杯が6月14日に開幕した。
ブラジルの初戦は大会4日目の6月17日21:00(日本時間18日早朝3:00)、ロシア南部ロストフ・ナ・ドヌで行われた。初戦の相手はスイス。日本代表が直前にテストマッチを行った相手だ。
ブラジルの先発は予想通り。直前のテストマッチと同じ布陣で、輪番制を採る今試合のキャプテンは、左SB(サイドバック)のマルセロ(レアルマドリッド)だった。
試合開始早々はスイスが攻撃を仕掛けていたが、徐々にブラジルペースに。そんな中、左サイドでネイマール(パリSG)、マルセロのパス交換から相手を崩し、そのこぼれ球をコウチーニョ(バルセロナ)が豪快にミドルシュートを決めた。これは本当にきれいなゴールだった。前半20分に、ブラジルが先制した。
このゴールでブラジルはだいぶ気分が楽になったはずだ。
その後もブラジルはペースをつかむが、追加点は奪えず、前半は1-0で折り返した。
しかし、後半早々の5分、スイスにゴールを決められてしまう。
CKからのヘッドできれいに決められ同点になった。
まだ、時間は十分あったが、結局最後までゴールを奪うことができず、初戦は1-1のドローという結果に終わった。
この試合で一番感じたことはネイマールに体のキレが感じられなかったことだ。
ネイマールは相当にファールをもらっていたが、それはいつものこと。そんな中でも、大舞台になればなるほど試合を決める大仕事を成し遂げるのだが、この試合では、残念ながら見られなかった。
今大会、前大会優勝のドイツが初戦で敗れたり、アルゼンチンが格下アイルランドと引き分けるなど、波乱含みの戦いが多い。
ブラジルは負けたわけではないし、引き分けで勝ち点1を取っているので、それほど焦る必要はないのだが、大会に臨むに当たりあまりに好調だっただけに、ショックを引きずらなければよいと思う。
ただ一つ思うことは、ブラジル監督のチチが前大会の日本の監督ザッケローニのようにならなければよい、ということだ。
前大会、4年前のブラジル大会では、日本代表はかなり期待されてW杯に臨んだものの、まったくよいところなくグループリーグで敗退した。それには、ザッケローニの国際経験のなさも大いに関係していると思う。
チチは素晴らしい監督だ。しかし、監督歴は、ほとんどがブラジル国内のクラブチームのみだ。中東のクラブを2チームだけ短期間指揮しているが、海外での経験はそれだけで、ナショナルチームの指揮を執るのも今回が始めて。国際大会もこのロシアW杯が初めてになる。
1ヶ月という限られた期間で一つの大会を戦うということは、その大会に向かうまでの過程、選手起用、コンディショニング等さまざまな要素を整えていかなければならない。
そういった不安面はあるが、それほど気にせず、グループリーグあと2戦は普通に戦えばよいと思う。
概してブラジルはスロースターターなので、私はそれほど気にしていない。
初戦は少し残念な結果ではあったが、悲観的になる必要はないと思う。
あとは、少し気になるのはドイツの状況だ。
というのも、決勝トーナメントに進むと、初戦の組み合わせはE組とF組の対戦となる。それぞれの1位と2位が対戦するので、当初の大方の予想では、E組1位がブラジル、F組1位がドイツというものなので、ブラジルとドイツは決勝まで当たらない組み合わせになる。しかし、仮にブラジルが1位通過でドイツが2位通過となった場合、いきなり決勝トーナメントの初戦でこの2チームが戦うことになるのだ。それはそれでおもしろいのかもしれないが、優勝候補同士のつぶしあいがいきなり行われるのはできれば避けてほしい。
ブラジルの次の試合は、22日(金)15:00(日本時間21:00)にサンクトペテルブルクでコスタリカと対戦する。テレビ朝日系で生放送される予定である。
【ロシアW杯】まもなくロシアW杯開幕!ブラジル代表は4年前の雪辱を果たせるか?
4年に一度のサッカーの祭典、FIFAワールドカップ・ロシア大会の開幕まで1週間を切った。前回2014年のブラジル大会では、日本国内でもザッケローニ率いる日本代表に対してかなりの期待感もあり、日本国中での盛り上がりもあったと思うが、今回はそれがほぼ感じられない。
私自身についても、前回のブラジル大会では実際に数試合現地に観に行くことにしていたせいもあり、開幕前からかなりの期待感を持って大会を迎えたことを思い出す。
今大会、日本代表への期待がほとんどできない状態ではあるが、対照的にブラジル代表はかなりよい状態で大会を迎える。
4年前の準決勝でドイツ相手に無様な姿を世界中に晒したミネイラォンの惨劇、そしてドゥンガが監督に就任しW杯南米予選でも10か国中6位と低迷していたほんの2年前までを知っている者からすると、優勝候補筆頭と言われるまでの状態になったことは奇跡としか思えない。いかに監督の力が重要かということを思い知らされる。
さて、そんなブラジル代表のW杯出場メンバーについて、核となる選手15人は早々に2月に発表されている。これは異例なことだ。選手のモチベーション等について、監督チチが考え抜いたやり方なのだろう。
15名に選ばれたメンバーでは、不動の右SB(サイドバック)であるダ二エウ・アウヴェス(パリSG)が5月のフランスカップ戦の決勝で右全十字靭帯損傷のため、復帰には間に合わず残念ながら最終のメンバーに入ることはできなかった。
最終的に選ばれた23名だが、ブラジル国内組は3名(コリンチャンス2名、グレミオ1名)、中国リーグから1名、それ以外の大部分はヨーロッパのクラブに所属している選手たちだ。
最も多いのは、プレミアリーグ(イングランド)をぶっちぎりで優勝したマンチェスターシティの4名だ。
ブラジル代表は、W杯直前の今月3日と10日に2試合のテストマッチを行っている。それぞれクロアチアとオーストリアと戦っているのだが、2-0、3-0と完封勝利を収めている。
右足甲を骨折し今年3月に手術を行ったネイマールにとって、6月3日のクロアチア戦が復帰戦となった。
この試合、後半から出場したのだが、早速豪快なゴールを決めるところがネイマールらしい。
続くオーストリア戦では先発出場を果たし、2戦連続でゴールを決めており、順調な仕上がりを見せている。関係者はホッとしたことだろう。
この2戦では、ネイマールのほかには、ガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)、フィリペ・コウチーニョ(バルセロナ)、そしてロベルト・フィルミーノ(リバプール)といった決めるべき攻撃陣がきちんとゴールを決めている。
先発メンバーについては、1戦目では、怪我明けで途中出場だったネイマールに代わりフェルナンジーニョ(マンチェスターシティ)が選ばれていたが、それ以外は2戦で共通しており、以下のメンバーで固定されていると考えてよいだろう。
GK 1.アリソン(ローマ)
12.マルセロ(レアルマドリッド)
MF 5.カゼミーロ(レアルマドリッド)
11.フィリペ・コウチーニョ(バルセロナ)
19.ウィリアン(チェルシー)
FW 9.ガブリエウ・ジェズース(マンチェスターシティ)
※番号は背番号。カッコ内は所属チーム。
「W杯の借りはW杯で返す。」
これが、ブラジル代表チームの共通認識のはずだ。
前評判も高く、好調をキープしながらW杯本番を迎えるブラジル代表だが、果たして前大会の雪辱を今大会で果たすことができるだろうか?
チチが監督になり、明らかにサッカーの質が変わっている。
サッカーでは何が起こるかわからないので何とも言えないのだが、今こそ、新しい強いブラジルサッカーを世界中に見せつけてほしいと思う。
ブラジルの弱点を探すとすれば、まずは不動の右SBダ二エウ・アウヴェスの欠場だろう。確かにダ二エウ・アウヴェスの不在は痛い。しかし、その穴はダニーロが埋めるべく奮闘している。
ダニーロは、サントスでもネイマールと同時代に活躍した一人だ。2011年にリベルタドーレス杯で優勝し、日本で行われたクラブW杯にも出場している。その後、ポルト、レアルマドリッドを経て、2017‐18シーズンからマンチェスターシティに移籍し、選手層の厚いチーム内でもレギュラーを奪い取っている。レアルマドリッドでは活躍できず不本意なシーズンを過ごしてきたが、W杯本番で巡ってきた大チャンスだ。この機会を十分に活かし、全世界に向けてアピールしてほしいと思う。
もう一つは、メンタルだ。
ブラジル人はメンタルが弱い。これは、意外にも思われるかもしれないが、私が7年間ブラジルで生活してきて一番感じてきたことだ。明るく調子のよいときはいいのだが、負のスパイラルに入ると、なかなか立ち直れない。
しかし、2年前のリオ五輪ではネイマールを中心としたブラジルサッカーチームは、見事にそれを克服し、決勝でPK戦の末、宿敵ドイツを破り金メダルに輝いたのだ。
今度は、W杯で正真正銘の世界一に輝いてほしい。
ブラジルのグループリーグ初戦は、6月17日(日)午後9時(日本時間18日(月)早朝3時)に、ロシア南部のロストフ・ナ・ドヌにて、スイスと対戦する。試合の様子は、NHK総合で生中継される。
これから1か月間、眠れない日々が続くことになるだろう。
素晴らしい戦いを見ていきたい。
そして、ブラジルのサッカーを思う存分体感したいと思う。
頑張れ、ブラジル!